朝ドラはどこまで“モデル”に忠実? 『らんまん』万太郎と寿恵子の“フラグ”を考える

 万太郎が名前をつけることに執着するのは、やがて訪れるであろう物語のピークに関係しているのではないだろうか。そう思って観ていると、第70話では、睡眠時間を削って研究に勤しむ万太郎の健康を寿恵子が心配する。「ずっとずっと私より長生きしてくれないと困るの」「わしはすえちゃんに長生きしてもらいたい」「お互い元気に長生きしなきゃいけないじゃないですか」「わしらふたり元気に長生きしたいき」と繰り返し長生きを語り合う。モデルの人物を知っていると、これはフラグではないかと想像する。

 朝ドラでは、ほかのドラマと同じくネタバレが忌み嫌われるが、主人公が最終的にどこにたどりつくかは知ったうえで観たいという不思議な欲求もある。ウイスキーをつくる、カップ麺をつくる未来を楽しみにし、パイロットにならないことに落胆するのである。万太郎のモデル・牧野富太郎の人生について、ここに明確に記すのも無粋なので書かないが、知っていたら、ゆくゆく万太郎と寿恵子は……と思う。まるで、万太郎と佑一郎の前を通り過ぎていく風のように、視聴者は未来に誘われている。

 第70話のラストシーン、朝が来たとき、映るのは笹の葉で、これもまたフラグ的ではある(フラグという言葉を使うのは、伏線がわからないことに意味があるからだ)。だが、ここまで、未来を想像させるのも親切過ぎるような気もする。なにせこれはモデルに基づいたオリジナルドラマであって、予想を覆す展開になってもおかしくはないからだ。いつもの朝ドラのように想像通りにきれいにまとまるか、そうではないのか。後半戦、風はどこに向かって吹いていくのだろうか。

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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