天海祐希はなぜ多くの人たちを魅了するのか? ドラマ、映画、舞台など2023年の大活躍

ドライな社会で光る天海の存在感

 うまくできないことに対して言い訳を探したり、他人よりも自分の方が苦労していると思いたくなったりすることは誰しも少なからずあるだろう。だが、天海は違う。

 宮根誠司との対談(4月16日放送のフジテレビ系『Mr.サンデー』)において天海は宝塚でスター街道を爽快に駆け抜けていた時期の心境について「プレッシャーはもちろん。でもどんな立場の方にもプレッシャーはあるから」「あの人よりも私の方が大変って思うことはしなかったかな」「できない自分も知ってるから。やって当たり前。努力して当たり前」と語っている。主役であれば他の人よりも自分が大変だと思うようなことがあってもおかしくないだろうが、天海は他人の苦労を十分理解した上で、自分自身と向き合っていた。

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 一本立ちの天海であるが、彼女はワンマンな人間では決してない。人に甘えるのを好まず、悩みを誰かに相談することはあまりないようであるが、他者に対しては肩入れしやすい性格のようだ。現在大ブレークしている伊藤沙莉も天海に感謝している一人だ。伊藤は『女王の教室』(日本テレビ系)で共演した際に天海から伝えられた言葉を胸に女優を続けてきたと打ち明けている。また、2022年9月4日放送『お笑いワイドショー マルコポロリ!』(カンテレ)では「もう45歳なんですよ」とどことなくあきらめモードで話す三浦マイルドに、「“もう”とか言わない!」と励ましていた。

 天海の他人に対する優しさは生来の性質によるものであろうが、苦労を知っているからこそのものでもあろう。最近は「年齢が上がってくると悩みとかない」とおもしろおかしく話す天海であるが、過去には「自分の不安や弱い部分を受け入れて乗り越えた人が1番強くて」「今死ぬ気でやるかどうかで将来変わってくるから」「自分でしか自分を動かせない」といった言葉も残している。

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 天海は『合理的にあり得ない』の涼子にも重なる。前述のように、天海は一本立ちの女性であるが、涼子も同様の女性である。傷害事件についても「自分がはめられた落とし前は自分でつけるから」「自分の手で解決しなきゃ意味がない」と述べる。その一方で、世話焼きであり、人の幸せのためにかいがいしく働く。仕草は大ぶりであるが女性らしく、心優しい涼子は天海と合わさる。

 不安の多い時代に属している私たちは天海の晴れやかなスマイルに癒され、下町育ち特有のあたたかみがある彼女に心惹かれているのだろう。天海はスター性だけではなく、多くの現代人に欠けているものをもっているのかもしれない。

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