『ラストマン』数々のヒントが導いた人間ドラマの“運命” 物語の全貌を振り返る

 皆実は盲目という、人に頼り、人を信じて生きてきた人。今回の事件の真相に辿り着いたのも、警察のみんなが協力して資料を集めたからだ。また、清二は保身の為に周りの人生を狂わせた悪い男なのだが、最後に「立派な警察官になったな、心太朗」と両手を差し出す。これは孤高に生きてきた心太朗が、実は周りに支えられ生きてきたことに気付かされる結末でもある。

 そして皆実が、「清二さん。あなたがやったことは決して許されることではありません。しかし41年前のあの日、あの時、私を救ってくれてありがとうございました」と言ったことで清二の心も救われ、実に優しいドラマだと感じる。今作は深く考察する難解ミステリーというより、出てくるヒントから運命を素直に受け入れていく、人間ドラマ重視の作品。それぞれの思いも理解できるし、納得の結末になったのではないかと思う(ただし要潤だけは悪い奴だ)。

 さて、皆実が滞在するホテルのバトラー・難波望海(王林)が実は心太朗をFBIで迎える交換研修生として適性審査するエージェントで、皆実との別れを惜しんだのも束の間、1週間後に心太朗がアメリカ・FBIに行くことが決定するというオチでドラマが終了。エピローグとしてのサービスだと思うが、心太朗の重い十字架が取れたことで、思いっきり大泉洋の面白さを発揮してもいいキャラになった。これからが福山とのボケとツッコミが冴え渡るバディになっていきそう。『相棒』(テレビ朝日系)の水谷豊のように、年齢を重ねていくごとに味が出てくるキャラだと思う。

 また、泉(永瀬廉)と技術支援捜査官の吾妻ゆうき(今田美桜)の関係も、これまで自分に気がある泉からの誘いを断っていたが、泉が刺され献身的に看病し、最後に自分から食事に誘うなど距離を縮めただけに、この2人もこれからが面白くなるはず。かつて福山のモノマネといえば、ドラマ『ひとつ屋根の下』(フジテレビ系)で兄役の江口洋介に言う「あんちゃ~ん」だったが、いずれ大泉の「あんちゃ~ん」が聞ける日が来るのだろうか。続編や劇場版に期待したい。

■配信情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TVer、Paraviにて配信中
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lastman_2023_tbs/
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs

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