『2001年宇宙の旅』から『M3GAN/ミーガン』まで AIとの付き合い方を映画から考える

学習していくAIと人間のつながり

 AIの最大の特徴は、自ら学習し進歩していく点にある。そこに彼らが感情を芽生えさせるというロマンを描いた映画も少なくない。2015年に公開された『チャッピー』では、学習によって“精神的に”成長していくロボットと、人間の交流が描かれている。世界で唯一の“考え、感じ、成長する”AIを搭載したチャッピー(シャールト・コプリー)は、素体は攻撃ロボットながら、まだなにも学習していないため、子どものような無邪気なふるまいをするのだ。ギャングに誘拐された彼は悪事を仕込まれていく。驚くべきスピードでさまざまなことを学習するチャッピー。しかしギャングたちと暮らすうち、彼らはお互いに愛着を覚えるようになる。初期のチャッピーの愛らしい動きと、学習を重ねることで成長していく姿に、思わず頬が緩む。そしてチャッピーの成長や彼とギャングたちの、そしてチャッピーを開発したエンジニアの絆が涙を誘うのだ。

 しかしAIに自我が芽生えることで、関係が変わってしまう可能性もある。『her/世界でひとつの彼女』(2013年)では、人間とAIの恋愛が描かれている。手紙代筆ライターのセオドア(ホアキン・フェニックス)は、妻と別居し孤独な日々と送っていた。そんな彼は、あるとき人工知能OSのサマンサ(スカーレット・ヨハンソン)に出会う。彼女の声に惹かれた彼は、次第に彼女と心を通わせていく。外見に左右されない究極の心の交流とも言える2人の関係だが、サマンサがAIとして多くのことを学習し、視野が広がるにつれて彼と距離ができていく過程は、人間相手でも起こりうる。AIが自我に目覚め、感情を持つということは、人間に近づくということだ。人間とほとんど差がないのであれば、その感情や行動を他人が抑圧することはできない。コンピュータは人間によって制御される、使われるもののはずなのに、それが覆ってしまうのだ。フィクションにおいて、それはときに脅威であり、ときにロマンだ。

 すでにAIが日常生活に定着しつつある現在、私たちはそれをどのように使っていくのか、あるいは付き合っていくのか、その判断を迫られている。しかしたとえ機械が相手であっても、良かれ悪しかれ、人間はコミュニケーションに感情が伴っていることを求めてしまうのではないだろうか。それは私たち人間が、感情や思惑を伴わないコミュニケーションを知らないからだ。このまま技術が進歩していくにつれて、少なくとも『エクス・マキナ』のエヴァのように、感情があるかのようにふるまうAIが登場する可能性は高いだろう。しかしそれは、倫理的にどんな問題を孕んでいるのか、考える必要がある。ここで紹介した映画にも、そのヒントがあるだろう。

■公開情報
『M3GAN/ミーガン』 
全国公開中
出演:アリソン・ウィリアムズ、 ロニー・チェン、ヴァイオレット・マッグロウほか
監督:ジェラルド・ジョンストン
脚本:アケラ・クーパー
製作総指揮:アリソン・ウィリアムズ、マーク・デヴィッド・カッチャー、
ライアン・テュレック、マイケル・クリア、ジャドソン・スコット、アダム・ヘンドリックス、グレッグ・ジルリース
製作:ジェイソン・ブラム, p.g.a.、ジェームズ・ワン, p.g.a.
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公式サイト:m3gan.jp/.jp
公式Twitter:@m3gan_JP

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