『東京リベンジャーズ』一虎は村上虹郎の代表的キャラに “個性”と“技術”に魅了される

 村上虹郎の「個性」と「技術」には、彼が新しい役を得て世に出るたびに驚かされてきた。追い詰められるチンピラに、幕末の伝説の人斬り、悲しみを背負った復員兵から、現代の等身大の若者像まで。これらすべてを彼はモノにし、私たちの前にほとんど完全な姿で現れては潔く去っていくーー。いま私たちの前に姿を見せているのは、映画『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-/-決戦-』の一虎だ。

 2部作からなる『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編』は、2020年の大ヒット作『東京リベンジャーズ』の続編であり、後編の『-決戦-』で決着となる。前編の『-運命-』の封切りから2カ月を経ての公開だが、この2カ月はとても長かった。村上は『血のハロウィン編』からの参戦者であり、この2部作におけるキーパーソンの一人。物語がどう転がっていくかのカギを握っており、前編では彼の言動に誰もが翻弄されたことだろう。その結論にたどり着くのがこの後編である。

吉沢亮&村上虹郎のアクションのルーツは? 『東京リベンジャーズ2』を武道家が語る

4月21日に『東京リベンジャーズ2 血のハロウィン編 -運命-』が公開された。元々『ビー・バップ・ハイスクール』(1985年)世…

 村上が演じる一虎は、北村匠海が扮する主人公・タケミチと因縁のある東京卍會の創設メンバーの一人。にもかかわらず、第1作目に彼は登場しなかった。それは彼が自身の起こしたとある事件によって少年院に入っていたから。この『血のハロウィン編』では東京卍會とその敵対組織である芭流覇羅の一大抗争が描かれるのだが、そこには一虎が少年院を出たことが大きく関係している。詳述は避けるが、彼はなぜか芭流覇羅の一員となり、東京卍會のかつての仲間たちに牙を剥く。一虎はケンカが強く、相手を殲滅するためならば手段を選ばない男だ。今作では彼がこのようになってしまった過程と、吉沢亮らが演じる東京卍會の面々との対峙が描かれるのである。

 一虎は非情な男だが、それは彼がそうしなければ自分を保っていられない弱い人間だからだ。演じる村上の表情には体温が感じられない。身体の扱いは派手なものの、声も抑揚を欠いている。まるで自身の“人間らしさ”を抑え込んでいるようである。しかしひとたび一虎の心が揺れると、村上の演技は何かが溢れ出すように熱を帯びたものになっていく。この溢れ出す“何か”とは、心の弱さからくる“人間らしさ”である。

関連記事