野球ファンは今すぐ劇場へ 『憧れを超えた侍たち』に刻まれた漫画を超えたエンディング
本作のクライマックスとも言えるのがメキシコとの準決勝だ。「令和の怪物」と呼ばれる佐々木朗希投手が、負ければ敗退が決まる大事な試合で3点先制されてしまう。降板後、ベンチ裏でしゃがみこんで泣き腫らしている場面では、こちらの胸も痛くなる。その後、逆転サヨナラ勝利を収めるとまた人目をはばからず涙を流していた。怪物だって21歳の若者なのだ。そして絶体絶命の場面で劇的な一打を放ったのが、予選から極度の不振で苦悩していた村上宗隆選手だったというのは、ちょっと出来すぎだろう。
決勝で輝いたのは、やっぱり大谷翔平選手だ。僅差を小刻みなリレーで守ってきた投手陣の後を受け、“泥だらけのストッパー”としてマウンドに上がり、マイク・トラウトから三振を奪って優勝決定。野球漫画としても出来すぎだと言われそうなエンディングを現出させた。優勝の瞬間、カメラは選手とともにマウンドに飛び出していくので、選手たちと一緒に飛び跳ねているような臨場感を味わうことができる。
ただ勝った試合の名場面をつなぐだけでなく、選手たちの苦悩や葛藤、揺れ動く感情まで克明に描くから、あらかじめ試合の結果を知っている観客の胸にも深く響く。だから『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』は、野球が好きな人なら観る価値のあるドキュメンタリーだと断言できる。
■公開情報
『憧れを超えた侍たち 世界一への記録』
6月29日(木)まで公開中
出演:侍ジャパントップチーム
主題歌:あいみょん「さよならの今日に」
ナレーション:窪田等
監督・撮影:三木慎太郎
制作:J SPORTS/NPBエンタープライズ
配給:アスミック・エース/J SPORTS
協力:日本野球機構、World Baseball Classic, Inc.、オリックス・バファローズ、福岡ソフトバンクホークス、埼玉西武ライオンズ、東北楽天ゴールデンイーグルス、千葉ロッテマリーンズ、北海道日本ハムファイターズ、東京ヤクルトスワローズ、横浜DeNAベイスターズ、阪神タイガース、読売ジャイアンツ、広島東洋カープ、中日ドラゴンズ
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