『ブラッドハウンド』はアクションファン必見! 爽やかさと凄惨さの絶妙なバランス
主人公のゴヌ(ウ・ドファン)が子犬のような表情でウジン(イ・サンイ)を「ヒョン(兄貴)」と呼んだ瞬間、このドラマのことが好きになった。そしてゴヌの放つ鋭いパンチが悪党の顔面を砕いた瞬間、このドラマのことがもっと好きになった。Netflixで配信された『ブラッドハウンド』は、話が滅茶苦茶おもしろく、キャラクターも魅力的。なにより主人公のゴヌとウジンの関係性が超最高だ。そして、アクションファンにこそ観てほしい。そんなNetflixオリジナルドラマの快作をご紹介する。
もしあなたが男2人の関係性が熱い物語を求めてNetflixを開いたとして、新しく配信されたNetflixオリジナルの韓国ドラマ『ブラッドハウンド』を逃す手はない。本作の制作・原作を務めたキム・ジュファンは男二人の関係性を描くことに執念を燃やし、実際に映画『ミッドナイト・ランナー』(2017年)、『ディヴァイン・フューリー/使者』(2019年)などで男二人の関係性を描いてきた映画監督である。そんな男がNetflixドラマを手がけた。理の当然として、余すことなく色んな形の男2人の関係性を見ることができるドラマに仕上がっている。
主人公のゴヌは若きボクサーで新人王戦のチャンピオン。その切れ味の鋭いストレートパンチのように性格は誠実かつ健気であり、また懐いた相手を見つめるその瞳は子犬そのもの。その一方で己の性分に自覚的で「僕はいつもまっすぐです」と語る妙なふてぶてしさもいい。対するウジンはゴヌ同様若手ボクサー。ゴヌとは新人王戦の決勝戦で出会う。まっすぐなゴヌに対してウジンはおちゃらけた性格で、海兵隊に対する妙な誇りを見せてはゴヌを困惑させる。その一方でゴヌの母親が騙されて借金を背負わされたと知るや否や出会って間もないゴヌのために「かわいい弟分なんです」と方々に頭を下げてどうにかお金を工面しようとする熱さを持つ。
正反対の2人はボクシングや海兵隊など、共通点を通じてすぐさま仲良くなる。「はいはい凸凹コンビ。よくあるやつね」と思われるかもしれないが、やはり王道を誠実にやってる作品は心にスッと染み渡る。2人の出会い、そしてサンチュ屋での個性溢れるやり取りを見ればどんなにひねくれた人でも、二人のやり取りを無限に見せてくれと思えるはずだ。
そんな2人が悪徳高利貸し組織にボクシングで挑む。この瑞々しいゴヌとウジンの関係性は『ミッドナイト・ランナー』を想起させる。キム・ジュファン監督の代表作の一つである『ミッドナイト・ランナー』は、警察学校の凸凹コンビがたまたま拉致現場に遭遇したことから事件を追うことになる珠玉の青春バディ映画。『ブラッドハウンド』のような瑞々しい2人のやり取りが楽しめる一方で、主人公コンビがボコボコにされて目を覚ますとそこは怪しげな解体場で、自分の体には人体の解体手順が書いてある。そんな韓国映画らしい闇の深すぎる事件にゾッとさせられるのが特色だ。この青春ものの爽やかさと韓国バイオレンスの凄惨さががっぷり四つで組み合っているキム・ジュファンの作家性ともいえる味わいは、『ブラッドハウンド』でも遺憾なく発揮されている。