無限に続くシリーズ化を希望! 正統派のパワーアップを遂げた『タイラー・レイク2』

 君の心にタイラー・レイクはいるか? というわけで、Netflixオリジナル映画にして、大ヒットアクション映画『タイラー・レイク -命の奪還-』(2020年)待望の続編である。その名もずばり『タイラー・レイク -命の奪還- 2』(2023年)。その中身は……これも潔いほどシンプルだ。

 裏社会で伝説になっている傭兵タイラー・レイク(クリス・ヘムズワース)は、前回のミッションで頑張りすぎて死にかけた。すんでのところで救護が間に合い、ギリギリのところで蘇生する。長い入院&リハビリを終えて引退生活を送っていたら、謎めいた男(イドリス・エルバ)が隠れ家にやってきた。そしてタイラーの元嫁さんの妹が、東欧のマフィア組織の男と結婚したばっかりに、刑務所に入っていると聞かされる。そして彼女とその子どもたちを奪還する任務を依頼された。そういう事情なら仕方がないと、タイラーは引退を取り消して特訓を開始。かくして再び頑張ることになるのだが……。敵は単なるマフィア組織ではなく、元々は軍隊で、おまけにボスの男は信じられないほど武闘派だった。

 前作は恐ろしくストイックなアクション映画だった。すなわち、どんでん返しやツイストではなく、ひたすらアクションの凄まじさで勝負するストイックな1本だったのである。クリヘムのグッドルッキングなガタイから繰り出される力強い前蹴りに、カーチェイス、銃撃戦、ナイフ、格闘、超絶ワンカット芸……アクション映画と聞いて思いつく、すべての要素がブチ込まれていた。それでいてボロボロになりながら戦うクリヘムの姿は文句なくカッコよく、下手な台詞の何十倍も雄弁に、タイラー・レイクという男の魅力を語っていた。いかなる状況でも折れず、戦うことをやめない。強く、正しく、優しい、まさに戦う男の理想像である。その姿に全世界のNetflix会員が「タイラー・レイクさん! お疲れ様っす!」と脱帽したものだ。

 そして今回は、続編に相応しい正統派のパワーアップを遂げている。前回が暑いインドが舞台だったので、今回は寒い東欧が舞台。やや辛そうな加減は減退しているが、任務開始早々に暴動刑務所正面突破、電車移動中の戦闘ヘリ襲撃など、壮絶な見せ場が絶え間なく続く。評判を呼んだワンカット芸には磨きがかかり、没入感は相変わらずだ。いい意味でゲームのような印象も受ける。

 さらに仲間の傭兵姉弟も今回は大活躍して強い印象を残すが、個人的には敵のムチャクチャさにやられた。マフィア組織だが、冒頭から市長を殺害するなどやりたい放題(観た人なら分かると思うが、私はこのシーンで絶妙な位置に穴が掘ってあった時点で「この映画は大丈夫だ」と思った)。いざタイラー・レイクとコトを構える状況になると、完全武装して国境を超えて殴り込み。現地警察をロケットランチャーでバコバコと吹き飛ばし、平和な街を紛争地帯にしながらタイラー・レイクを追撃する。もはやマフィアという次元ではない気がするが、映画としてはコレでヨシッとしか言いようがない。ちなみにマフィア側に皆川亮二先生のマンガでしか見ない丸い巨漢がいたので、何者だろうと調べたら、有名な腕相撲の選手でした。それはさておき、そんな相手が執拗に襲ってくるので、前作にあった「お疲れ様っす!」感も健在である。最後の最後の決戦が、それまでの盛り上がりに比べると地味に見えるのが難点だが、同時にあれは本作の肝でもある。

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