『ラストマン』永瀬廉がドラマ内外の“橋渡し役”に 実直な性格の泉が今後の鍵を握る?

 福山雅治、大泉洋、吉田羊、上川隆也といった、そうそうたる俳優陣が迫真の演技を繰り広げる『ラストマンー全盲の捜査官ー』(TBS系)。その中で、物怖じしない堂々とした立ち振る舞いを見せているのが、護道泉を演じる永瀬廉だ。

 泉は、警視庁捜査一課の刑事で佐久良(吉田羊)班に所属。祖父の代から警察庁長官を歴任する由緒正しい警察一家・護道家の人間で、次期当主となる人物だが、家柄を一切鼻にかけず、強い正義感を持って職務に励んでいる。叔父にあたる心太朗(大泉洋)のことは「心ちゃん」と呼んでいて、気心が知れている間柄だということが伺える。泉は、心太朗や皆実(福山雅治)とともに捜査をする立場であることから父の京吾(上川隆也)より、内密に皆実の行動を調べるように指示され、スパイのような行動をすることに。結果として心太朗が、41年前に皆実の両親を殺害した強盗放火殺人事件の容疑者の息子であることや、皆実がそれを知った上で日本でのアテンド役に心太朗を直接指名したことを知ってしまった。

『夕暮れに、手をつなぐ』のカギは永瀬廉の自然な演技にあり? モノローグに感じる“憂い”

「僕たちは、夕暮れに手をつないだ。夏の花火を夢見ながら。でも、僕たちに夏は来なかったんだよな。2人の夏はなかったんだ」  火曜…

 1月期のドラマ『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)で、自分の気持ちを素直に話せない口下手男子・海野音を演じた永瀬は、今作で2クール連続のTBSドラマ出演。持ち前のクールさは重厚な人間ドラマが描かれることの多い日曜劇場にしっかりと馴染んでいる。特に今回は、それぞれの職務上の立場や41年前の事件の真相が絡んだ思惑などが入り乱れ、感情だけで動くことはなかなかに難しい。そんな中で泉は、人の気持ちを大切にしようとする。京吾が最初から自分と皆実の本当の関係性や、ともに行動することの真意を知っていたことに憤慨する心太朗には「本当に父さんは心ちゃんのためを思って」と、京吾が心太朗を心配していることを明かそうとした。また、心太朗が皆実のアテンド役を辞めることを宣言すると、皆実が41年前の事件は1人で調べることにしたと言っていたことを打ち明け、「皆実さんも心ちゃんを傷つけたくなかったんだと思うよ」と声をかけた。泉の気遣いも虚しく、心太朗が「お前は黙ってろ」と一喝したり、怒ったまま部屋から出て行ったりしたときは、さすがに泉が気の毒になってしまった。

 大人の世界は、正しさや自分の気持ち、情熱だけではうまく渡っていけない。それは心太朗や皆実だけではなく、京吾やデボラ(木村多江)の行動からも感じ取ることができる。泉も頭ではそのことがわかっていたとしても、突発的に気持ちが前に出てきてしまうのだろう。このような泉のキャラクターは、彼と同世代にとっては内容の濃い、このドラマに入り込みやすくなるきっかけとなるだろう。逆に心太朗や皆実の心情が理解できる世代には、泉のこの若干の青臭さが可愛く思え、いつの間に詰めていた息がふっと抜ける瞬間になることだろう。刑事としては若手だが、名家としての重圧も肌で感じている泉は、ドラマの中でも、また視聴者にとっても“橋渡し役”となっているといえるのではないだろうか。

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