坂口健太郎の演技は“父性愛”が滲む 『Dr.チョコレート』で俳優として新たな領域に

 ドラマ『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)で主演を務める坂口健太郎は、チームを率いる冷静沈着で頼れるリーダーとして、またDr.チョコレートを必死に守り抜く父性愛を感じさせるところなど、男としての魅力の塊のような人物だ。物語も終盤に突入し、いよいよ黒幕と遭遇する展開を迎えようとしている。そこで、坂口演じるTeacher役の魅力を振り返ってみたい。

 どんなに難しい手術でも必ず成功させる謎の天才外科医「Dr.チョコレート」こと10歳の少女・寺島唯(白山乃愛)と、彼女の代理人を務める義手の元医者 “Teacher”こと野田哲也(坂口健太郎)は、スゴ腕の6人の医療仲間「チョコレート・カンパニー」と共に、どんなワケあり患者でも、現金1億円と秘密保持契約、そしてチョコレートの報酬で救っていく。その背景にあるのは、唯の両親とTeacherの利き腕を奪った2年前の爆破事件の真相を追求することだった。爆破を起こした「め組」は、今の政治や社会が闇の組織に支配されていると信じる、ネットで生まれた陰謀論者の集団。世直しとして唯の両親も殺された。そして「め組」を指揮しているのが警視庁の管理官・町野信也(戸次重幸)。ただ、め組が崇拝する「め様」なのかはまだ分からない。

 坂口健太郎といえば、どこか達観したような雰囲気を纏う冷静沈着な人で、それが偏屈や塩対応のキャラクターとして描かれることが多かった。一方で、淡々としているが、安心感であったり、頼れる存在を築いていくのが巧みな役者でもある。Teacher役は、坂口が得意とする塩対応キャラをブラッシュアップしたような役で、冷静沈着、唯に関することや事件以外は基本は顔色変えずに淡々と対応していくので、どんな危機的状況でも頼れる安心感、時には冷徹な、見事なチームリーダーぶりを見せている。

 また相手との交渉の際には、この淡々とした演技があることで、相手に全て見過ごしているような印象を与えている。罠にハメられているようで実は罠にハメている、このような真意が読みづらいミスアテリアスさが、物語上のどんでん返しに非常に役立っている。

 この心が読みづらい冷静沈着さというものが、Dr.チョコレートを追う新聞記者・奥泉渚(西野七瀬)との駆け引きを面白いものにしている。渚は、スクープが欲しいとグイグイとくるタイプ。Teacherは、当初は、情報交換はギブアンドテイクと、渚にマウントをとり、記者の情報網を利用していた。これが、先にも書いた、あえて騙されているのか、先回りして対応をしているのかという心の探り合いがある面白さだ。

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