山田裕貴、絶対に折れなかった『ペントレ』を経て 「自分の声を聞いてあげようかなって」

赤楚衛二は「“愛”や“孤独”を捉える感覚」が一緒だった

――赤楚さんとは初共演ですが、直哉のバディとなる優斗役が赤楚さんでよかったと感じたのはどんなときですか?

山田:俳優面での【第1段階】として、相手のお芝居を受け取って返していく、ということは、どの現場でも、どの俳優さんでもやることだと思うんです。でも、僕が彼でよかったなって思うのは、【第2段階】以上に踏み込んでくれたから。彼が俳優としてじゃなくて、人として心を開いてくれたんです。ある日、彼自身のこと、僕自身のこと……今まで生きてきた環境や人生のことを話し合ったときがあって。彼の“愛”や“孤独”を捉える感覚が、僕と一緒だったんですよ。彼のことなので深くは喋れないけど、非常に深いところで繋がれたんです。「たぶんこう思ってたでしょ?」って。だから、おこがましいけど「僕、そこの道を通ってきたんだよね」という感じで話させてもらったら、彼はものすごくまっすぐな目で「本当にこの作品で、山田くんに出会えてよかったです」と言ってくれたんです。「僕、初めてこの話をしました。こんなに素を出したことはないんです」と言ってくれたことが、お芝居でどれだけ作ろうとしても作れない、本物のバディにたどり着くきっかけをくれたような気がしていて、すごく嬉しかったです。

――クランクアップ後も、その関係性は続いていく?

山田:そうだと思います。また一緒にやりたいですね。

――今回は監督やプロデューサーに対して絶対に折れなかったとのことですが、今後もそういった作品作りをされていくのでしょうか。

山田:これは、先ほどの「今の自分に変わったきっかけ」にも通じるんですけど、今まではオファーが来たらやる、来たらやる、ということを続けてきたので、自分の目標や夢がわからなくなっていて。「お願いします」って言われたからやろう、という感覚しかなくて、自分が何をやりたいのか、どういう俳優になりたいのかもわからなくなっていました。武士みたいな人間なので、斬って斬って斬りまくれというタイプではあるんですけど、もうちょっと冷静に、自分の声を聞いてあげようかなって。次の作品に向けて、もう一回、自分の中で内省する時間を持ちたいなと思います。その前に、まずは『ペンディングトレイン』と大河は全力で生き抜こう、そこまでは今まで通り魂を燃やし続けようかなと思ってます。

――改めてこの作品に携わって、幸せだなと思うのはどんなことですか?

山田:やっぱり温かい人たちに触れられたことです。キャストもスタッフさんも、本当に長時間撮影してるのに、次の日に「大丈夫?」「撮休の日、大河だったんでしょう?」とか声をかけてくれて、主演がこんなに心配させちゃダメだよなって考え直しました。優しさに触れたことで、「みんなが心配するんじゃなくて、本当にこの人と一緒に仕事をするのが楽しいなって思える人じゃなきゃダメだな」と。それは僕の唯一の盲点だったというか、頑張っていればいいってもんじゃないっていう。これは、今の日本人の方、全員に言えるんじゃないかなって思うんですけど(笑)。それに、この作品は樹海で撮影して、崖で撮影して、山で撮影して……久々にビルの間で撮影したら、「気持ち悪いな」と思ったんです。今まではそれが普通だったのに、そっちの方が不思議になる。慣れって怖いなと思いました。人間は絶対に今の世の中に慣れてしまっていて、本当は“ある”っていうだけで幸せなんだろうな、と。でも、それだとさっき言ったことと矛盾しちゃうんですけどね(笑)。あくまで仕事面においては、「お仕事があることはありがたい。じゃあ、やらなきゃ」という想いでやってきたけど、もうちょっと自分の幸せを確かめようと思わせてくれたことに、すごく感謝と幸せを感じます。

――過酷な現場を完走して、クランクアップを迎えたら何がしたいですか?

山田:何も考えたくないですし、何もしたくないです(笑)。もちろん、キャストやスタッフさんと、みんなで『ペントレ』のことを語りたいとは思っています。そういった思いはありますけど、それも僕が喋りたいんじゃなくて、聞いていたいだけ。喋るのは疲れちゃうから(笑)。僕は、最後に力尽きる(『あしたのジョー』の)力石さん……いや、(『鬼滅の刃』の)煉獄さんです。「私は私の責務を全うする。私の前では誰も死なせない、心を燃やせ」ということをずっとやってきたと思っています。

■放送情報
金曜ドラマ『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』
TBS系にて、毎週金曜22:00~22:54放送
出演:山田裕貴、赤楚衛二、上白石萌歌、井之脇海、古川琴音、藤原丈一郎(なにわ男子)、日向亘、片岡凜、池田優斗、金澤美穂、宮崎秋人、村田秀亮(とろサーモン)、志田彩良、白石隼也、大西礼芳、坪倉由幸(我が家)、山口紗弥加、前田公輝、濱津隆之、杉本哲太、松雪泰子
脚本:金子ありさ
演出:田中健太、岡本伸吾、加藤尚樹
プロデューサー:宮﨑真佐子、丸山いづみ
編成:吉藤芽衣、平岡紗哉
製作:TBSスパークル、TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/p_train823_tbs/
公式Twitter:@p_train823_tbs
公式Instagram:p_train823_tbs

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