『ブラッドハウンド』は一度観たら止まらない まばたきを忘れる鍛え抜かれた高速アクション

 また一つ、一気見したくなるような疾走感のある韓国ドラマが現れた。先日Netflixで配信が始まった『ブラッドハウンド』。本作の演出は、警察官を目指す真逆な性格の2人が、支え合いながら事件の真相に迫っていく映画『ミッドナイトランナー』(2017年)のキム・ジュファンが手がける。Webtoon『猟犬たち』を原作としており、高利貸し業界の抗争と血の繋がりを超えた家族のような絆をコロナ禍と共に描く。全8話の短編物語で、一度観始めると絶妙な終わり方をする各話に引きつけられ、観るのを止められない。そんな本作の見どころに迫りたい。

 物語を前へ進める2人の若者。それがゴヌ(ウ・ドファン)と、ウジン(イ・サンイ)だ。ボクサーと海兵隊出身という共通点を持つ2人は、試合で出会い、兄弟のような関係性へとなっていく。ある日、ゴヌの母が詐欺に合い多額の借金を背負うことに。なんとかお金を工面しようとした2人は、ある人の用心棒として雇われることになったのだが……。「終わるまで終わらない」というセリフ通り、悪徳な高利貸し業者と真っ向勝負をする2人から最後まで目が離せない。

 ゴヌとウジンの、持ちつ持たれつな関係性。そして彼らを取り巻く家族のような不思議な情というのが注目ポイントの一つ。彼らは皆、自らの心に隠した痛みを共有し合うことで繋がっていく。大企業を解雇された父が長年裁判で闘った結果負け、弁護費用が借金として残ったゴヌ。さらにコロナ禍で営業不振になったカフェを営む母のために、試合の賞金を渡している。一方、五輪の銅メダリストを父に持つものの、認めて貰えずにいるウジン。2人は苦労しながら生きてきた過去を持つ。さらに2人だけでなく、幼き頃に父を亡くし施設で育ったヒョンジュ(キム・セロン)や、高利貸し業界から足を洗い我が娘のように彼女を育ててきたテホ(ホ・ジュノ)が出会っていく。いつしか一つ屋根の下で暮らし、血の繋がりを超えて衣食住を共にする姿は、本当の幸せな家族を見ているよう。嵐の前の静けさかのように幸せなシーンが挟まれる度に不安になるが、互いが生きる希望になっていく過程に心が温まる。

 監督自身も、「今回は2時間ではなく8時間なので、2人のブロマンスだけでは足りないと思った。自分にできるブロマンスは全部入れた。“ブロマンスの天国”と自信を持って言える」と語っている。(※)あまり書くと豪華キャスト陣の登場がネタバレになってしまうが、様々な支え合いを本編で是非堪能いただきたい。

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