『らんまん』「若は卑怯です」を受けて万太郎はどうする? 切ない竹雄の悔し涙
「けんど、わしがここにおったら、竹雄心配するじゃろ」とまた誤魔化すような言い方をする万太郎に竹雄は遂にキレる。
「若は卑怯です」
「ああ、そうやのう、すまんのう」そういって家を出る万太郎。彼は自分の“やりたい”を通すために周りの人の気持ちを時に利用する。田邊教授(要潤)に雑誌の話を持ちかけようとした時は、機嫌をよくするために西洋音楽の話をしたり、大窪昭三郎(今野浩喜)には学会誌の創刊に際しコメントも貰いたいとか、「監督」など煽てたり、割と自分の都合の良いように場を動かしてきたように思える。そんな彼に置いてけぼりにされてしまう人々もいるのだ。
寿恵子(浜辺美波)も例外ではない。母・まつ(牧瀬里穂)に、もし万太郎が次に来たら自分の大好きな本『南総里見八犬伝』を渡してほしいと託けるが、代わりに問いかけをされてしまう。
「あの人、良さそうなお人だけど、前ばかり向いているんだろう? 立ち止まって、あんたを振り向いて、一緒に読んでくれるかねえ」
その言葉を聞いて動揺する寿恵子を、目の動きで繊細に表現する浜辺。前に進み続けることも素晴らしいが、時には立ち止まったり振り向いたりすることで他者に寄り添うこともできる。そうせず、寿恵子に間接的な告白と決意表明をする万太郎は、自分の中ではそれでスッキリしたはず。しかし急に来なくなった理由がわからない(しかし「来ない宣言」をされた)寿恵子がどう思うのか気にかけられていない時点で、その行動はいささか身勝手なものだった。
朝ごはんにオムレツを食べる万太郎。ただ、無邪気に美味い美味いと食べる彼は竹雄の皿の上にはオムレツがないことに気づかない。そして佐川に帰る決意を伝えた竹雄に、「えっ」と驚く万太郎。竹雄の言い分も当然だ。体の弱い万太郎が仕事をせずに、自由に研究ができるよう代わりに仕事をし、稼ぎに出ていたのに、その努力や気遣いを振り払われてしまったのだから。万太郎が“前に進み続ける”ことは、悪いことではない。しかし、前に進みたいからといって無碍にされてしまう竹雄や、置いてきぼりにされてしまう寿恵子の気持ちにも気づけるだろうか。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK