『Dr.チョコレート』『恋は光』にみる西野七瀬の“説得力” 悪役以外の演技も深みを増す
2023年も引き続き、映画やドラマでの活躍が目立ってきている西野七瀬。もはや彼女が過去に乃木坂46の肩書きを背負っていたと思っている人はきっと少ないのではないだろうか。現在放送されている土曜ドラマ『Dr.チョコレート』(日本テレビ系)では、敏腕記者という新たな役どころに挑戦し、新境地を見せつけている西野の俳優としての現在地を追ってみたい。
『49』(日本テレビ)で俳優のキャリアをスタートさせた西野。2015年に放送された『初森ベマーズ』(テレビ東京系)で乃木坂46が主演のドラマとはいえ、初めてメインキャラクターを務める。この時点では彼女が将来的に俳優としてのキャリアを歩んでいく未来が見えていたかと言えばそうではないが、『初森ベマーズ』で主演を務めたことは大きな転機だったに違いない。2018年には『電影少女 -VIDEO GIRL AI 2018-』(テレビ東京系)でドラマ初主演を果たすと、その“儚げな”ヒロイン像は、西野のパブリックイメージと相まって、強烈な印象を残した。
そして、西野といえば『あなたの番です』(日本テレビ系)が代表作と挙げられることも多い。同作では普通の大学生を装って裏では猟奇的な連続殺人の実行犯・黒島沙和役を演じた西野は、最後の最後に黒幕として登場し視聴者を驚かせた。乃木坂46を卒業すると本格的に俳優としてのキャリアを歩み始め、『アンサング・シンデレラ 病院薬剤師の処方箋』(フジテレビ系)や『ハコヅメ〜たたかう!交番女子〜』(日本テレビ系)、『電影少女』以来となるドラマ主演を務めた『言霊荘』(テレビ朝日系)など、ジャンルを問わず多彩な役柄で魅力を開花させていく。
西野七瀬、2021年の飛躍 『言霊荘』『孤狼の血』など多様なジャンルに適応する俳優に
俳優として活躍を見せている乃木坂46卒業生の1人・西野七瀬。現在、テレビ朝日×ABEMA共同制作ドラマ『言霊荘』で主演を務め、そ…
2023年にも映画『イチケイのカラス』や『シン・仮面ライダー』など出演作が続々と公開され、中でも『シン・仮面ライダー』のSHOCKER上級構成員・ハチオーグ/ヒロミ役は大きな話題を呼んだ。緑川ルリ子(浜辺美波)に対して「あなたのおもちゃを目の前で壊してあげる。だから泣いて。私の前で思いっきり泣いて」と叫ぶシーンは、ハチオーグの歪んだ愛情を見事に表現していた。
こうして見ると、『あなたの番です』や『シン・仮面ライダー』を筆頭に、西野の演技が評価されてきたのは悪役が多い。それもそのはず、西野は「大人しい」「儚い」というイメージがアイドル時代を経て先行しているため、そのギャップが視聴者にも大きなインパクトを与える。だが、実は西野のキャリアの中で明確に悪役とされるキャラクターを演じてきたのはその2作しかない。
では、そのほかの作品での西野はどうなのか。筆者が個人的に西野の魅力を感じられる作品として評しているのは、2022年に公開された『恋は光』である。“恋する女性が光って視える”特異な体質を持つ大学生・西条(神尾楓珠)に片想いをしている幼なじみの北代を演じたのが西野。これまでに出演してきたどの作品よりも良い意味で“特徴がない”役柄だが、だからこそ彼女の何気ない表情や仕草、セリフを発する際の息遣いといった細かな演技に目を惹かれた。実は西野の魅力は自然体な演技にこそあるのではないか、と感じられたのが本作だった。