『ラストマン』“親ガチャ”に福山雅治が投げかけた疑問 三者三様の親子のあり方

 第6話「不器用な愛のカタチ」で光が当たったのは、親子の思いの通わなさだ。養子の恵茉に対する菊知夫妻の思いを、皆実は自らの体験を通して代弁する。「本当の親子だとか家族だとか、そんなことはどうでもいいんです。人が人を思う気持ちに理由なんてありませんから」と。もしかするとうまく伝わらなかっただけで、菊知も宇佐美に同じような思いを抱いていたかもしれない。

 宇佐美の菊知に対する執着は愛情の裏返しだ。親の愛情を知らずに育った人間はほかにもいて、心太朗は何歳になっても育ての親である清二(寺尾聰)にうまく甘えられない。心太朗の場合、実の父である鎌田國士(津田健次郎)が殺人を犯して収監されてから、親子の情は行き場を失っており、その空白を埋めたのが犯罪を憎む心だった。

 もう一人、皆実も41年前の事件で両親を殺されており、実の親に育てられなかった点で心太朗や宇佐美と共通点がある。ただし、自身も被害者である皆実は心情的なわだかまりはなく、心の中を占めるのはどうして両親は殺されたのかという疑問だろう。来日の目的もそこにあった。

 “親ガチャ”をキーワードに三者三様の親子のあり方を映した第6話は、ドラマ終盤に向けて重要な視点を提供するものだった。『TOKYO MER〜走る緊急救命室〜』(TBS系)と同じSIT隊長の新井役で登場した山田純大は、番組を横断した日曜劇場ならではの並行宇宙を体現した。「なぜ、殺されたか」と「なぜ、殺したか」は似ているようでまったく違う。被害者にとって乗り越えるべき過去は、加害者とその家族にとって一生背負う十字架となる。心太朗と2つの家族、皆実の両親。ガチャのように偶然を装って相まみえた息子たちは、真実を知って何を思うのか。実に興味深い。

■放送情報
日曜劇場『ラストマン-全盲の捜査官-』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:福山雅治、大泉洋、永瀬廉(King & Prince)、今田美桜、松尾諭、今井朋彦、奥智哉、王林、寺尾聰、吉田羊、上川隆也
脚本:黒岩勉
演出:土井裕泰、平野俊一、石井康晴、伊東祥宏
撮影監督:山本英夫
プロデュース:益田千愛、元井桃
編成プロデュース:東仲恵吾
音楽:木村秀彬、mouse on the keys
全盲所作指導:ダイアログ・イン・ザ・ダーク
協力:日本視覚障害者団体連合
製作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/lastman_2023_tbs/
公式Twitter:@LASTMAN_tbs
公式Instagram:LASTMAN_tbs

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