『あなたがしてくれなくても』を男性側視点で語る 永山瑛太と岩田剛典の決定的な違い
一方、岩田剛典演じる誠は、個人的にはこのドラマの中で一番説教をしたくなる人物。要は仕事で忙しい妻が相手をしてくれないから、自分の心を満たすためにみちとプラトニックな浮気をしていく。夕飯を作って待っていても、あまり喜んでくれなかったり、結婚記念日もスッポかされたり、自分は家政夫じゃないと言わんばかりに愛情が薄れていく。かつてのドラマなら専業主婦が不倫に走る典型的なパターンだ。しかし誠は決して主夫ではなく、副部長という役職の仕事をしていて、会社で働くことの大変さは知っているはず。また、楓(田中みな実)が心を入れ替え、誠と仲良くしようとしても「新しい彼女ができたからもういいわ」と言わんばかりに、冷たい態度をとってやり返す心の狭さ。今は時代が変わり、当てはまらない言葉になったが、男らしくない、いわゆる女々しい男のように感じてしまう。
最初にみちにセックスレスのことを打ち明けられたことで、心理的な距離が近づいてしまうのも無理はないように思う。ただ、研修旅行で体を重ねる寸前までいってから、会社でいちいち目を合わせたり、ガラス越しに手を合わせたり、サインを送ったり、もう誰が見ても社内不倫をしているのがバレバレな態度を取るのはまずかったのではないか。これは職場の後輩・北原華(武田玲奈)でなくても気づくだろう。そして頻繁にやり取りをして、みちが必死に遠ざかろうとするも、しつこく追いかけるなど、その事実だけを列挙すると、ストーカー的にも見えてしまう。他人のために行動しているようで、全ては自分が満たされるための行動と言ってもいいのではないか。正直、もう楓は別れた方が正解だと思うが、楓の怒りの矛先はみちへ向かうだろう。陽一は擁護したい気持ちになるが、誠は男から見ると男らしくないと感じる。その違いは、陽一は変わろうとしていた、誠は自分の欲求を満たすための行動、この違いだろう。
ただ、みちもまた、浮気したことを告白され、真っ先に誠の顔を思い浮かべ、慰めてもらおうと走る。その行動の方が、よっぽど傷が深いと思う。本作は、なぜ人が浮気をするのか、精神的に孤独になった人たちが何を求めるのか、ひとりひとりが悪人にならないよう、その心理描写が丁寧に描かれている。そして、カラダの浮気が罪なのか、心の浮気が罪なのかを問いただし、心の浮気の罪深さをしっかりと描いている。果たして彼らは元の鞘に戻るのか、それとも新しい人生を歩むのか。
■放送情報
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』
フジテレビ系にて、毎週木曜22:00~22:54放送
出演:奈緒、岩田剛典、田中みな実、永山瑛太、さとうほなみ、武田玲奈、宇野祥平、MEGUMI、大塚寧々ほか
原作:ハルノ晴『あなたがしてくれなくても』(双葉社)
脚本:市川貴幸、おかざきさとこ、黒田狭
演出:西谷弘
プロデュース:三竿玲子
主題歌:稲葉浩志「Stray Hearts」(VERMILLION RECORDS)
挿入歌:稲葉浩志「ダンスはうまく踊れない」(VERMILLION RECORDS)
音楽:菅野祐悟
©︎フジテレビ
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