『PSYCHO-PASS サイコパス』を観るのは今からでも遅くない! 劇場版は絶好の入り口に
現在、全国の劇場で大ヒット上映中のアニメ『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』は、5月12日の公開以来、わずか3日間で観客動員17万7千人、興行収入2億円を記録して週間映画ランキング初登場4位を果たした(興行通信社調べ)。根強いリピーター観客に支えられて未だに興行成績を伸ばしている『名探偵コナン 黒鉄の魚影』や『THE FIRST SLAM DUNK』など競合が並ぶ中、全国170館強の上映規模で大変な躍進ぶりだ。2012年に放送開始したTVシリーズの10周年プロジェクトの一環であり、劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス 3 FIRST INSPECTOR』から3年ぶりの新作映画ということで、ファンからの期待が高かったのも大きい。
『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス PROVIDENCE』(以下、『PROVIDENCE』)は、殺害されたミリシア・ストロンスカヤ博士が確立していた研究理論<ストロンスカヤ文書>を巡って、その文書を狙う組織<ピースブレイカー>と、彼らの動向をマークしていた外務省行動課、および行動課と協力する安局の刑事たちの戦いを描く。開巻早々、外国船舶を襲撃する<ピースブレイカー>と、外務省所属の狡噛慎也の攻防戦が始まり、一気に映画に引き込まれる。外務省行動課の狡噛は、もともと公安に所属していた刑事であり、古巣ともいえる部署でかつての相棒・常守朱と組んで<ピースブレイカー>との戦いに身を投じる。
『PROVIDENCE』は、この10年間に制作されてきたTVシリーズ3作品と、劇場版3作品(劇場版のうち1作は中編3部作)のうち、劇場版『PSYCHO-PASS サイコパス Sinners of the System恩讐の彼方に__』とTVアニメ3期の空白部分を埋めるミッシングリンクにあたる。
Production I.Gによる緻密な映像とサウンドデザインを大スクリーンで味わうだけでも楽しい映画だが、YouTube【フジテレビ】アニメ公式チャンネルにアップされた振り返りPVを観てから行くと、なお『PROVIDENCE』への理解が深まるだろう。『PSYCHO-PASS サイコパス』の歴史を約10分に凝縮した映像に合わせ、常守朱役の花澤香菜、狡噛慎也役の関智一が新録ナレーションで物語の基本設定と、これまでのあらすじを語ってくれているので分かりやすい。往々にして長い歴史のシリーズ作品には新規ファンが入りにくいのでは? と思われがちだが、こうした振り返りPVを制作している辺りに、新規層にも観てもらいたいスタッフの気概が感じられる。
『PROVIDENCE』でキャラクターデザインと総作画監督を務めるアニメーターは、映画『ベルセルク 黄金時代篇』三部作(2012~2013年)や『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年)のキャラも手がけている恩田尚之。TVアニメ一期でも各話の作画に参加しているが、3期のキャラクターデザイン担当を経て、より男女ともに色気を感じるタッチになっている。女性陣が総じて美しいのは勿論のこと、狡噛から「ギノ」と呼ばれる公安局の宜野座伸元や、同じく公安の須郷徹平、そして彼らに協力する元・心理学教授の雑賀譲二など、男性陣のセクシーさも要注目。『PSYCHO-PASS サイコパス』の登場人物は平均的に大人のキャラクター揃いだが、中でもTVアニメ一期の頃は20歳の新人だった朱も、多くの事件を経験して内面も外面も成長し、『PROVIDENCE』ではすっかり落ち着いた25歳の女性になっている。ハードな刑事アクションの群像劇として申し分ないメンツが揃っており、その筋を好む人には満足度が高いはずだ。