『水星の魔女』あまりにも残酷なスレッタの“喪失” リプリチャイルドの語源が今後の鍵に

 スレッタとは何者でどこから生まれてきたのか。ミオリネやグエル、シャディクといった各陣営の思惑が複雑に絡み合う中で、第18話「空っぽな私たち」ではスレッタを中心に物語が展開した。スレッタにとってはタフな展開ではあったが、同時に彼女の周りには多くの仲間がいることを再認識させられた回でもあった。

※本稿には『機動戦士ガンダム 水星の魔女』第18話のネタバレを含みます。

 第17話でミオリネとエアリアルという心の拠り所を同時に失ったスレッタ。ミオリネはともかく、長い付き合いでもあるエアリアルの喪失は、スレッタにとって生きる活力を損ないかねないほど大きな問題のはずだ。だが、冒頭では明るく授業を受けるなど、そんな素振りは一切見せない。地球寮のメンバーもそんなスレッタを心配そうに見守っているが、あまりにも気丈に生活しているスレッタを見て少しばかり安心しているようだった。そんなスレッタを気にかけていたのがチュチュだ。身勝手な振る舞いをするミオリネに対しての苛立ちをスレッタにぶつけるが、スレッタは「私が悪いんです」と約束を破った自分に非があるという。さらに追い打ちをかけるようにラウダからは「空っぽの水星女」と言われる始末。

「最初から私には何もなかったんです。なのにホルダーとか花婿とか……間違ってるってなんで今まで気づかなかったんだろう」

 スレッタは確かに傷ついていた。これまでのスレッタは自分の感情を表に出すことはなかったとは言わないが、何を考えているのか、心の内が読めないところがあった。しかし、今回はチュチュに向かって自分の思いを打ち明けられるようになっている。かつてはエアリアルと母親のみが彼女にとっての拠り所だったが、アスティカシア学園では地球寮のメンバーを始め、多くのかけがえのない仲間が出来た。それはスレッタにとって何よりも大きな収穫だったのではないか。スレッタの心の内を察知して、寄り添ってあげたチュチュの優しさも身にしみる。

 そんなチュチュはスレッタをミオリネの元へと連れて行くことを決意する。「お前が受け入れているフリしているのが悪いんだぞ」「思ってることちゃんとミオリネに言え」と少々言葉遣いは荒いものの、その言葉の裏に仲間を思う愛情が感じられて微笑ましい。荒々しさのあったチュチュも今ではしっかり者のお姉さんとして地球寮を支えていた。それもニカの存在があってこそか。

 スレッタの存在に関してはこれまでも多くの考察がなされてきたが、ついに何者なのかが明かされた。チュチュたちに見送られ、ミオリネの元へと向かったスレッタの目の前に現れたエアリアル。まるでスレッタがここに来ることが分かっていたかのよう。エアリアルに乗り込んだスレッタは改めてミオリネと会えなくなるのは嫌だと打ち明け、プロスペラから教えられた「逃げたら一つ、進めば二つ」の言葉も今は信じられないと口にする。すると別の空間へと意識が移行し、スレッタの目の前にはエリクトが現れ、「鍵の役目はもうおしまい」「肉体のないエリィの代わり」「僕の遺伝子から作られたリプリチャイルドってことだよ」と明らかになるスレッタの出自。ここでは「カヴンの子」「リプリチャイルド」という新たなワードが出てきたが、カヴンについては17世紀に実在したとされる魔女、イゾベル・ガウディーの自白に登場する単語であり、その中でイゾベルは「各カヴンには13人の人間がいます」と言ったとされている。エリクトとスレッタ、そして11人のガンビットを合わせて13人の存在が確認できる描写もあったことから、何らかの関係があることは間違いなさそうだ。そして、「リプリチャイルド」については語源は明かされておらず、クローンに近しい意味とまでしか分かっていない。今後のキーワードになってくるだろう。

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