『紳士とお嬢さん』は懐かしの“韓ドラあるある”だらけ!? イライラするのに観てしまう理由
さらに、本作の功労者といえるのは、子役でありながら、すでに数々の作品で存在感のある演技を放っているセジョン役を演じたソ・ウジンだろう。2015年7月23日生まれの7歳で、2017年の『ゴー・バック夫婦』でデビュー。2020年の『ハイバイ、ママ!』では女児役を演じ話題となる。以降、『マウス~ある殺人者の系譜~』『シュルプ』など話題作、人気作に数々出演。本作の演技が高く評価され、「2021KBS演技大賞 青少年演技賞(男性部門)」を6歳で受賞している。大きな眼を持ち、高い表現力で、サイコパス気質を持つ子ども役から純粋無垢な役まで幅広くこなしており、今後の活躍が期待される子役の1人だ。
本作は、『紳士とお嬢さん』のタイトルにある通り、紳士のヨングクと、お嬢さんであるダンダンの恋物語と周囲の人々を描いたものだが、全編に渡り、「感情の爆発力」がとにかく凄い。昨今の韓国ドラマのスタイリッシュで斬新な演出手法ではなく、かつての韓国ドラマのように、泣き叫び、思いの丈をぶちまける姿が多く観られる。登場人物のほぼ全員が大泣きし、大笑いし、まくしたて、自分の心を洗いざらい表現する。そのために姑息な手を使ったり、犯罪に走るものもいる。純粋な愛を貫き通すことへの葛藤があるかと思えば、自分の欲のために突っ走るものもいる。複雑で多彩な感情を持つ人間ドラマが繰り広げられ、喚き合い、罵り合い、髪を引っ張り合う。
さらに、呆気にとられるほど、次から次へと起きる“ありえない出来事”。その全てを抱きとめるように、ここぞというところで流れるイム・ヨンウンの「愛はいつも逃げる」。このOSTが“なんだかいい感じ”に、ジンっと心に染み渡る。全編を通して、この「愛はいつも逃げる」が流れると、「あぁ、いいなぁ……」としみじみし、時には涙してしまい、イライラしていたことも川の流れのように流してくれるのだ。そして、大騒ぎの一家たちの行く末が気になり、続きを観てしまい、気づくとあの曲が流れるのを待っている自分がいることに気づかされる。
本作は、ドタバタコメディでありながら、根底にあるヒューマンドラマに、“やめられない、とまらない”中毒性がある。事あるごとに大騒ぎの登場人物たちとともに、笑って、泣いて、怒って、人生を覗き見させてもらいながら、家族の幸せを願ってしまう。懐かしさを感じさせる、不思議な魅力のある作品だ。
■配信情報
『紳士とお嬢さん』
Netflixにて配信中
出演:チ・ヒョヌ、イ・セヒ、カン・ウンタク
原作・制作:シン・チャンソク、キム・サギョン