『あなたがしてくれなくても』そのものが心理テスト? 違う弱さを持つ登場人物たち
「引きずってますよ」そう言われてドキッとしたのは、会議で使った機器の電源コードのことではなく、きっと進むまいと決めたはずの恋が頭を支配していたから……。
木曜劇場『あなたがしてくれなくても』(フジテレビ系)では、登場人物たちの心理状況を踏まえると、何気ないシーンがより心にひっかかるように描かれていると感じる。なかでも、主要人物たちの迷いが膨らんだ第6話は、そうした意味深な場面が多々見受けられた。
みち(奈緒)は新名(岩田剛典)への恋を断ち切り、夫の陽一(永山瑛太)との平穏な日常を取り戻そうとしていた。しかし、本心ではまったく割り切れていない感情が、煮詰まった味噌汁に投影される。新名への想いを要領よく隠すことができない、そんなみちの不器用さもうまく包めない餃子ともリンクしているようにも感じた。
一方で、新名の妻・楓(田中みな実)も、「仕事か、家庭か」という自問自答を繰り返しながら新名のためにキッチンに立つのだが、まったく整理できない頭の中が、そのままキッチンの荒れっぷりにあらわれる。
一見するとスマートに何でもこなしそうな楓。しかし、こうして手際の悪い楓を知るほどに、そう見られるように必死で繕っているのだとわかるシーンだ。そして、そんな自分のことがわかっているからこそ、キャリアも子供も同時進行に手に入れられるなんて思えないのかもしれない。
また、みち、陽一、そして陽一が衝動的に関係を持ってしまった結衣花(さとうほなみ)が、焼き肉を共にするという場面も印象的だった。陽一と結衣花が勤めるカフェのオーナー・高坂(宇野祥平)も妻以外に付き合っている彼女がいることを考えると、このテーブルに座る全員が肉体的に、あるいは心理的に不倫を経験しているというのも、なかなか考えさせられるところ。
しかも、そのメンバーに向かって高坂が「焼き肉のシメに何を頼むかで浮気度がわかる」心理テストなんて話題を出すものだから、燃え上がる七輪の炎とは裏腹に、ヒヤッとするものがあった。その心理テストがどのような結果なのかは最後まで聞くことができなかったが、心理テストで大事なのは自分自身の中で思い当たる節があるかどうかだ。
もしかしたら『あなたがしてくれなくても』そのものが、ひとつの心理テストのようなものかもしれない。どのキャラクターを見ているときに1番心が乱されるかで、自分にとって何に対して許せないかを考えるきっかけになるのではないだろうか。
たとえば、みちを見ていてざわつく人は、簡単に自分の言葉を撤回して逃げる「ズルさ」に。陽一を見てモヤモヤする人は、相手を傷つけてでも自分を守ろうとする「甘え」に。新名を見て悶々とする人は、相手に振り回されていると見せかけて周りが見えなくなるほどの「自分本位な行動」に。楓に苛立たしさを覚える人は、自分が同じように拒否されないと人の痛みに気づけない「鈍感さ」に……。