『波よ聞いてくれ』に溢れるラジオ業界へのリスペクト カオスな展開で光った瑞穂の言葉
「自由だ。作家の思いついた企画、パーソナリティとの雑談で浮かんだアイデアが次の放送で実現できる。成功か失敗かもリスナーの反応ですぐに分かっちまう。まどろっこしさのない怖い世界だが、それが癖になるんだよなあ」
久連木が語ったその魅力に本作も最大のリスペクトを払い、この番組自体をまるでラジオのように、スタッフとキャストが一丸となって非常に自由度の高い作品に仕上げてきた。その姿勢がよく表れているのが、後半で描かれる久連木の救出劇だろう。久連木から送られてきた、逆再生すると意味がわかるSOSラップをミナレに歌わせたかと思えば、電波ジャック集団のアジトでは本格アクションで敵を撃退させる。
そんな「あれ、これってなんのドラマだっけ?」と頭が混乱するカオスな展開の中でも心を揺さぶるのが、瑞穂の宣言だ。ラジオ業界のために自分ができることは何かを考えた結果、瑞穂は2年以内にチーフディレクターとなり、パーソナリティーのミナレ、構成作家の久連木とともに最強の番組を作ることを決意する。ひいてはそれが久連木の居場所を守ることにつながると信じて。
瑞穂の宣言は集団のハニートラップ要因である穂隠の心を動かす。その名前からして、彼女は瑞穂の内面にある弱さを反映したキャラクターだろう。構成作家という夢を諦め、自分の能力ではなく色仕掛けで久連木を誘惑する彼女に打ち勝ち、瑞穂がまた一歩成長を遂げた第4話。地方ラジオ局を取り巻く厳しい現状、それでもなおラジオを愛し、孤軍奮闘する人々の姿を描きながらも、それに負けじと自分たちも面白いものを作っていこうとする製作陣の気概をひしひしと感じた回だった。
■放送情報
『波よ聞いてくれ』
テレビ朝日系にて、毎週金曜23:15〜0:15放送
出演:小芝風花、片寄涼太、原菜乃華、中村ゆりか、平野綾、西村瑞樹(バイきんぐ)、井頭愛海、中川知香、小市慢太郎、北村一輝ほか
原作:沙村広明『波よ聞いてくれ』(講談社『月刊アフタヌーン』連載)
脚本:古家和尚
演出:住田崇、片山修、植田尚
音楽:林ゆうき、山城ショウゴ
エグゼクティブプロデューサー:内山聖子(テレビ朝日)
プロデューサー:高崎壮太(テレビ朝日)、神通勉(MMJ)
制作:テレビ朝日、MMJ
©テレビ朝日
公式サイト:https://www.tv-asahi.co.jp/namiyo/