『ペンディングトレイン』赤楚衛二の瞳がもたらす安心感 山田裕貴が表現する複雑な胸中も

 過酷な状況下、それでも生きる意味を探す乗客たち。『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系/以下『ペンディングトレイン』)の第3話では、対立しがちだった直哉(山田裕貴)と優斗(赤楚衛二)が、少しずつわかり合おうとする。さらに何度も挫けそうになる心を乗客それぞれが励ましあい、希望と再生が描かれた。

 人影を見たという田中(杉本哲太)は、直哉の仕事道具の入ったシザーケースを持って走り去ってしまう。このことで直哉は田中と決裂。田中は電車を降り、一人、森の中で暮らすと言い出した。優斗は田中にも生き延びてほしいと思っている。それゆえに、直哉と対立してしまうのだった。そんな中でも車両の人々は雨水を家事に使い、飲み水を汲みに行き、食糧を探しに出るなど、生き延びるための“生活”が始まっていた。それぞれの得意分野の知恵を絞ることで、夜には夕飯の時間も。だがそこでもまた、田中を巡る不信感ゆえの論争が絶えない。さらにこの森には、まだ直哉や優斗が気付いていない人物が潜んでいる様子……。

 直哉と優斗は相変わらず反りが合わない。協調性を大切にする優斗は乗客の全員が生きのびるために率先して自分が指揮を取ろうとしていた。一方の直哉は、一人ひとりが自主的に動くことが生き残るために重要だと考える。度々言い合いになる2人だったが、ある時直哉の生い立ちを知った優斗は、そっと直哉の心に寄り添うのだった。

 第3話は、直哉を演じる山田裕貴と優斗を演じる赤楚衛二の芝居のすばらしさが光る。山田は直哉というキャラクターの複雑な胸中を些細な仕草で表現。口では「弟に腹が立っている」と言う直哉だが、心の奥底ではグレてしまった弟を救い切れなかった自分を責めていたのだ。そんな回想シーンの数々は、まるで直哉が生きてきた人生を私たちも追体験しているかのごとく、感情が込み上げてくる。山田はそれだけ直哉というキャラクターと真摯に向き合い、より深い人物像を作り上げているのだろう。時に台詞に記される言葉とは裏腹な直哉という存在を、芝居の力で大きく引き出しているのだと感じた。

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