『らんまん』志尊淳演じる竹雄から溢れ出た「好きじゃ」 物語は高知編から東京編へ

 朝ドラ『らんまん』(NHK総合)の高知編が第5週をもって幕を閉じ、次週からいよいよ舞台を東京に移す。高知編ラストとなった第25話は、万太郎(神木隆之介)から別れを告げられた竹雄(志尊淳)もまた東京を目指す、その動機を描いたいわゆる“竹雄回”だ。

 「赤と白が一つずつ」ーータキ(松坂慶子)が生ける赤と白の梅は、まるで綾(佐久間由衣)と万太郎のメタファーのようだ。タキは、当時まだ9歳だった竹雄に当主である万太郎のお目付役としての任務を課した。だが、万太郎が峰屋を出ていく以上、その主従関係は解かれる。「この先は、おまんが自分で決めたらえい」とタキは、人生の選択を竹雄自身に委ねるのだ。

 万太郎にも、綾にも、父である市蔵(小松利昌)にも、タキにも、いざ自由にしろと言われると困ってしまう。愚痴愚痴言いながら、同時に井戸水を被って頭を冷やしつつ、竹雄は峰屋と万太郎、どちらの梅を選ぶか決めていた。いや、逡巡する思いに決断を下すという表現の方が正しいのかもしれない。

 向かったのは綾のもと。それはずっと渡せなかったくしと「好き」という思いを伝えるため。 峰屋の当主になることが決まっている綾と番頭の息子である竹雄が結ばれるどころか、当時のしきたりではその思いを口にすることすらはばかれる時代。綾からはいつものようにどこか子供扱いされながらも、竹雄から溢れ出た「好きじゃ」の一言によって空気が一変する。くし以上に、長年ずっと渡したかった「好き」という思い。ここで綾の思いに答えを出すこと、もしくは彼女の思いを描くのは野暮ということだろう。

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