『波よ聞いてくれ』『日曜の夜ぐらいは...』春ドラマはラジオが熱い 偶然から生まれる奇跡

 なんだか不安で眠れない夜、ラジオをかける。すると、そこから流れてくる誰かの話し声に妙に安心しきってよく眠れるのだ。無論、トークについ聞き入ってしまい、そのまま朝を迎えることもあるけれど。

 そんなラジオの魅力をあらゆる形で届けるドラマが今期は多い。金曜23時15分から放送されている小芝風花主演の『波よ聞いてくれ』(テレビ朝日系)は、ローカルラジオ局が舞台。2020年にアニメ化もされた沙村広明による人気同名漫画を原作に、彼氏にフラれた上にお金を騙し取られ、人生絶望中のやさぐれヒロイン・鼓田ミナレ(小芝風花)がラジオパーソナリティーとしての才能を開花させていく姿を描いている。

 本作の見どころは何と言っても、タレントでも芸人でもアナウンサーでもない、いわば喋りに関してはド素人でありながら、ラジオ局のプロデューサーにDJの素質を見出されるミナレのキャラクターだ。無音3秒で放送事故という緊迫感の中、一切噛まずに喋り続けられる度胸とリスナーを引き込む話術を天から与えられたこの魅力的な主人公に、完全に憑依した小芝の演技力に圧倒される。

 そうしてあれよあれよと深夜帯のラジオで冠番組を持つことになるミナレだが、その内容はとにかくカオス。元カレを成敗する架空実況だったり、殺人犯扱いした同じアパートの住民に対する公開謝罪だったり、「え? 何が行われてるの?」と混乱しながらもミナレの巧みなトーク回しにワクワクさせられる。そして、最後はちょっぴりいい話でまとまって感動してしまう。この予測不可能な展開に終始心を揺さぶられる感じがラジオの醍醐味であり、それをそのまま具現化したのが本作といえるだろう。

清野菜名、岸井ゆきの、生見愛瑠による運命的な出会い 『日曜の夜ぐらいは...』で意気投合

不思議な一期一会だ。『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)第1話では、ままならない日常を過ごす住まいも職業もお…

 一方、4月30日から始まった『日曜の夜ぐらいは...』(ABCテレビ・テレビ朝日系)ではラジオが“出会いのきっかけ”として機能している。清野菜名主演、岸井ゆきのと生見愛瑠が共演に名を連ねる本作は、3人の女性が織りなすハートフルな友情物語。名もなき人々に光を当て続ける脚本家の岡田惠和らしい、リアリティのある丁寧な生活の描写が初回の放送から話題となった。

 清野演じる主人公のサチは車椅子の母親と団地で2人暮らし。生活を支えるためにアルバイトを休みなく続けている。一方、岸井演じる翔子は家族に縁を切られ、単身生活を送るタクシードライバー。生見演じる若葉は一緒に暮らす祖母とちくわぶ工場に勤務中で、それぞれに接点はない。

 そんな彼女たちをつなげるのが、お笑い芸人エレキコミックの人気ラジオ番組『エレキコミックのラジオ君』が主催するリスナー限定のバスツアー。実のところ、エレキコミックは本当に2005年から“エレキ学園修学旅行”というバスツアーを開催しているのだ。同ツアーはラジオ番組主催というわけではないが、人気パーソナリティーがリスナーの旅に同行するツアーは実在している。

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