『合理的にあり得ない』コメディエンヌ白石聖に期待! 会話劇で光る根本ノンジ脚本の魅力

 根本の特長は会話劇で発揮される。しんみりと沁みる芝居や軽妙な言葉のキャッチボールが潤滑油となり、作品やキャラクターを身近に引き寄せる。まじめな会話の中に差し込まれる軽口にクスッとさせられ、なにげない雑談に気持ちがほぐれる。キャラクターがそこにいて、素で話しているような自然さを感じるのだ。

 それは今作でも確認できる。天海祐希と松下洸平による緩急自在のかけ合いは本作の見どころの一つで、ドラマの大きな推進力になっている。コメディ専門ではない2人が間合いや表情、声量やトーンをコントロールして笑いのツボを突く様子は見ていて気持ち良い。当意即妙なコンビのベースには、演者の想像力を刺激する台本があるといえるだろう。

 天海と松下のケミストリーに新たに加わった白石聖は、若手ながら主演作がいくつもあり実力的に申し分ない。注目したいのは白石のコメディエンヌとしての才能だ。これまでにもオタク気質の学生やこじらせ女子を演じてきたが、少しずれたところのある家出女子に白石は適任だ。ミステリーかつコメディの本作での化学反応を期待したい。

 本作はニヤニヤしながら観ていると、時々はっとするようなセリフが飛び出す。油断していたら、第3話で涼子から本藤へ向けた言葉が胸をえぐった。本藤になかったのは自信ではなく覚悟。「誰だって自信なんかないですよ。勝つか負けるか、成功するか失敗するか、そのはざまで誰もが悩んでいる。ただ、負けた時の覚悟があるのとないのとでは、その後の人生がまったく違う」と涼子。自信がないのは当たり前。本当に必要なのは覚悟であり、勇気をもって踏み出すことで道が開けると伝えていた。

■放送情報
『合理的にあり得ない~探偵・上水流涼子の解明~』
カンテレ・フジテレビ系にて、毎週月曜22:00〜放送
出演:天海祐希、松下洸平、白石聖、中川大輔、丸山智己、仲村トオルほか
原作:柚月裕子『合理的にあり得ない 上水流涼子の解明』(講談社文庫)
脚本:根本ノンジ
演出:光野道夫、二宮崇、倉木義典
プロデューサー:萩原崇、清家優輝
音楽:眞鍋昭大
制作協力:ファインエンターテインメント
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト: https://www.ktv.jp/arienai/
公式Twitter:https://twitter.com/arienai_g
公式Instagram:https://www.instagram.com/arienai_g/

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