十味&まるぴが考える、コミュニケーションの秘訣 “変わっている”ことも長所になる
『アルプススタンドのはしの方』(2020年)の城定秀夫監督が、井上かえるのライトノベルを映画化した『放課後アングラーライフ』が4月29日より全国公開される。
同作は、いじめに遭っていた高校生・追川めざしが転校先で釣り同好会「アングラー女子会」のメンバーと少しずつ交流を深めていく物語。他人との関係性を断とうとしていためざしが、アングラー女子会の白木須椎羅らと出会い、どのように心情を変化させていくのかが見どころだ。
そんな同作について、めざし役の十味、椎羅役のまるぴに話を訊いた。
10代だけではなく、大人も考えさせられる作品
――めざし、椎羅たちと同世代の観客はもちろんのこと、思春期を終えた人たちにとっても響く物語でした。お2人はいかがでしたか?
十味:私自身がキラキラとした学生時代を送っていたとは言い難くて、めざしと似ているところがあったんです。「目立たないようにしよう」「嫌われないようにしよう」と思っていて。結局、自分は誰かと打ち解けることが少なかったんですけど、めざしはアングラ女子会のみんなに心を許していきます。そういう青春のキラキラを、役を通して取り戻せた気分になりました。
まるぴ:私は映画を観終わったあと泣いちゃって、人に見せられないような顔になりました。まさに10代だけではなく、大人も考えさせられる作品だと思うんです。めざしがいじめられてしまうところ、それによってつらい気持ちになるところ、そしていろんなことを乗り越えようとする部分。そういうところって誰にでも当てはまる気がします。あと、「人に対してこんな言い方をしたら、こういう風に傷つけてしまうんだ」ということにも気づくはずです。
十味:映画のなかでは感情があふれて泣いてしまう場面もあるのですが、私にこの役が務まるのかな、と不安でもありました。だけど、まるぴが言うように誰にでも当てはまる出来事が描かれているので、自分でもビックリするくらいめざしの気持ちに入り込めて、感情的になることも多かったです。
――めざし、椎羅には釣りがあるから日常を楽しむことができますよね。十味さん、まるぴさんは「これがあるから毎日が充実している」というものはありますか?
十味:やっぱり、まずお仕事ですね。私は仕事がない日って、結構気分が沈んじゃうタイプで。ライブでファンのみんなと会えないとダメなんです。それくらい仕事とみんなの存在が大きい。私生活では、アニメですね。作品を観ながらモソモソとなにかを食べるのが好きなんです。でもそのとき口にするのが、はっきりとした味わいがあるものではなく、噛めば噛むほど味が出てくるような食べもの。ふかしたさつまいも、カサカサになったパン、乾いた白米とか。
まるぴ:ちょっと待ってください、カサカサのパンとか乾いた白米ってなんですか(笑)。私の場合は「まるぴ」という存在かなって。本来、自分に自信があるタイプではないんです。でも朝、SNSで「やほみちゃん」という挨拶をすると、「まるぴ」として生きるスイッチが入ります。そして何事にもチャレンジできる性格になるんです。もし「まるぴ」がいなかったら、もともとの自分も嫌いになっていたかもしれません。ただ、本来の自分と「まるぴ」がまったく違うタイプではないので、オン、オフの切り替えが難しくって。いつもは寝る瞬間に切り替わるんですけど、たまにずっと「まるぴ」の状態で休まらないときもあります。
十味:そういえば撮影期間中って、寝ているときも役が抜けきらなくて夢にまで出てくることってなかった?
まるぴ:ありました! 撮影中はそれこそ「まるぴ」ではなく「椎羅」になりきっていたので。私はきっと感情移入しやすいタイプなんです。