『らんまん』見事だった神木隆之介と志尊淳の激怒と葛藤 “おみやげ”を胸に東京を発つ

 竹雄の心配をよそに、万太郎はまたいつもの調子でいなくなってしまう。竹雄の脳裏にフラッシュバックする、雪の降る幼少期のあの日の記憶。万太郎が姿を見せても竹雄は腹の虫がおさまらない。そこには綾(佐久間由衣)と幸吉(笠松将)を巡る恋心の抑制も積み重なっているのだろうが、同時に万太郎を諌め当主として正すことができるのは自分しかいないという責任感もあるはずだ。峰屋の番頭の息子として、万太郎とは主従関係にあり、タキからお目付役を命じられた日から、当主を支え、守ると忠義を誓った竹雄。そこにはいつしか家来や部下という関係性を超えた、万太郎と竹雄という個々の関係性が生まれている。万太郎も竹雄を一番の理解者として信頼しているからこそ、彼からの叱咤激励が心に刺さる。“ヒロイン”と例えたくなるような綾への逡巡から当主への激怒まで振り幅広い芝居を見せてくれる志尊淳、それに対して「分かっちゅうがじゃ」と当主としての本気の葛藤を少ないセリフと俯き顔の視線で表現する神木隆之介も流石だ。

 万太郎にとってもう一つの運命の出会いと言えるのが、寿恵子(浜辺美波)の存在だ。ご縁があり、万太郎は「白梅堂のかるやき」「寿恵子」の両方といっぺんに再会を果たす。

「あの時のカエル様でしょう? 今日は木に登らないんですね」

「うん。明日はもうくにへ帰るきの。あっ、カエルだけに」

 そんな他愛もない会話をして屋台を去っていく万太郎。おなごに興味を持たなかった万太郎が一目惚れをした寿恵子。このチャンスを逃したら、きっともう会うことはない。それでも東京は佐川からは遠すぎた。万太郎が初恋を胸に仕舞い込もうとしたその時、「カエル様!」と寿恵子がお土産を持ってやってきた。愛らしい満面の笑みを振り撒くその彼女が、寿恵子という名前であることすらも、そして後の最愛の妻となることも、万太郎はまだ知らない。

参考

※『牧野博士のふるさと高知から ようこそ「らんまん」スペシャル』(NHK総合)

■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣、広末涼子、松坂慶子ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK

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