『らんまん』志尊淳が体現する竹雄の切なさと寂しさ 綾と幸吉の関係が気になり過ぎる

 春が来た。東京の博覧会に出品する酒が出来上がる頃、綾(佐久間由衣)に向ける竹雄(志尊淳)の想いは募るばかり。『らんまん』(NHK総合)第12話は、そんな彼が幸吉(笠松将)と綾の親しげな様子にヤキモキする。

 東京行きが決まったと同時に万太郎(神木隆之介)は、自分が中退した小学校から“先生にならないか”と誘いを受けた。「峰屋」の面々も「格好がつく!」と彼を説得しようとするが、東京に行くまでに草花に対する知見をより深めたい万太郎にとってそんな暇なかった。万太郎はいつだって、自分のことを優先してばかりで、それを反省する様子もあまり見せない。一方で今回印象的だったのは、縁談を断って落ち込む姉の綾だった。綾だって「峰屋」の事業に集中したいが、年頃かつ麗しい容姿のため縁談が絶えない。今回も40歳超えの年上の男やもめが相手だった。前の奥さんを病気で亡くしているため、「なんもせんでええ、のんびり過ごしてほしい」と言われたそうだ。今でいう専業主婦……と言っても、家のことは女中さんがやってくれるだろうから、実質本当に何もしないことになりそう。野心を持ち、家業を成長させたいとビジネス意識の高い綾からすれば、そんな言葉は何も嬉しくなかった。しかし、一方で綺麗な着物を着て機嫌よく片付ける方が良いことも理解している。

「自分のことばっかり。醜いよ」

 好きなこと(酒)に夢中になる性格は万太郎と同じだが、綾は子供の頃、酒蔵に入ったことを怒られた記憶が鮮明に残っているように“好きなものを好きでいること”に対する罪悪感を少し抱えているように感じる。その罪悪感こそ、万太郎との大きな差であり違いだ。

 そんな彼女を見守り続けるのが竹雄。彼の綾への気持ちは日に日に明らかなものとして描かれている。着物が汚れることも厭わない様子で地面に寝転ぶ彼女を見つけた時に少し微笑んでいたり、「竹雄、バッタがおる!」と神社の階段を降りる時に子供のように振る舞う彼女をみて、“ああああっ”と顔を両手で覆ったり。反応が完全に限界オタの所業なのだ。

 しかし、そんな竹雄のライバルとも言えるのが幸吉。出来立ての麹を綾に食べさせて、教える。綾は麹の作り方ひとつで酒の味が変わることを知り、よりキリッとした辛口の酒を作ることにした。彼女の突然のお願いを幸吉は真剣に聞き、「わかりました」とすぐに受け入れる。くしゃみをする彼の首元に「いかん」と布を巻いてあげる綾。その様子をたまたま見てしまう竹雄! 演じる志尊淳の仰々しくなく、切なさと寂しさが滲み出るような表情が竹雄の抑え込む感情を見事に体現していた。

関連記事