『名探偵コナン 漆黒の追跡者』黒の組織VSコナンの全面対決 蘭の人間離れした身体能力も
終盤で描かれる蘭とアイリッシュのバトルアクションにも注目だ。アニメ本編でも実際に描かれたとあるシーンを思い出しながら、アイリッシュが放つ拳銃の弾丸をかわす蘭の人間離れした身体能力の高さには思わず惚れ惚れしてしまう。黒の組織のメンバーと蘭が拳を交わすというのもアニメ本編や他の劇場版では滅多に見ることのないレアシーン。まさに本作ならではの場面と言えるだろう。
クライマックスで描かれるコナンの言動には、被害者や市井の人々だけでなく、加害者や自身にとって因縁の相手であろうと死なせることなく命を守ろうとするコナンの姿勢が垣間見える。これはアニメ本編における「ピアノソナタ『月光』殺人事件」や「工藤新一NYの事件」などで常にコナンが貫き続けてきた信念であり、これは『コナン』シリーズで一貫して描かれるコナン/新一の探偵としての矜持だ。コナンの信念はたとえ組織の一員を相手にしてもブレることはない。コナンの強い信念を本作でも感じることができる。
本作『漆黒の追跡者』の中心となる七夕と麻雀牌を取り巻く事件は、他の劇場版作品で起こる事件と比べるとやや地味な印象を受けるが、コナンが足を使ってひとつずつヒントとなる証言や要素を集め、それを繋ぎ合わせて事件の真相にたどり着くさまに、コナンの探偵らしい振る舞いを改めて見ることができる。そして、その最中に交わされる服部平次とのやり取りには彼らの友情を感じることができる。自身にとって最大の危機が迫っている中、平次に感謝の言葉を紡ぐコナンと、それを察知して絶対に無事でいろと伝える平次の姿。おたがいにストレートな言葉にはしないものの、様々な事件を通して通じ合ったふたりだからこその空気感に注目してほしい。
なによりもコナンと黒ずくめの組織の攻防に注目してほしい『漆黒の追跡者』。4月14日より全国公開の『黒鉄の魚影』の鑑賞前に観れば、『黒鉄の魚影』での組織の暗躍ぶりがより立体的になるはずだ。
■放送情報
『名探偵コナン 漆黒の追跡者(チェイサー)』
日本テレビ系にて、4月14日(金)21:00~22:54放送
原作:青山剛昌『名探偵コナン』(小学館『週刊少年サンデー』連載中)
監督:山本泰一郎
脚本:古内一成
音楽:大野克夫
声の出演:高山みなみ、山崎和佳奈、神谷明、堀之紀、立木文彦、小山茉美、DAIGO
©2009 青山剛昌/名探偵コナン製作委員会