『キル・ボクスン』チョン・ドヨン旋風到来中 イ・ジェウクが短時間でインパクトを残す
その他にも、ボクスンと同じ「MKエンターテインメント」所属の殺し屋ハン・ヒソン役にこちらも旬のク・ギョファンが、ミンギュの妹で理事のチャ・ミニをイ・ソムが演じ、それぞれ癖のあるキャラクターを生き生きと演じている。ク・ギョファンは、ボクスンに憧れていながらも、ミニのボクスンへの嫉妬に利用され、ボクスンを殺そうとすることに。
ボクスンは、凄腕の殺し屋ながら、家に帰ると思春期の娘ジェヨン(キム・シア)に振り回される日々。殺し屋であっても、ひとりの母親であり、母親業の方が殺し屋よりも大変なようだ。ボクスンを振り回す娘ジェヨンを演じたキム・シアは、『虐待の証明』、『キングダム:アシンの物語』、『静かなる海』と立て続けに注目作品に出演した天才子役として存在感を放つ。本作でも、母親が殺し屋と知らず、思春期の悩みを抱える娘役を、チョン・ドヨン相手に堂々と演じている。さらに、チョン・ドヨンと『ユア・マイ・サンシャイン』で共演したファン・ジョンミンが、インパクトのあるヤクザ役でボクスンと対決するシーンも。
本作は、名優たちに旬の俳優たちが勢ぞろいの役者陣の演技を、ピョン・ヒョンソン監督ならではの、スタイリッシュな映像描写で芸術的に映している。ノワールアクションとして、なかでも“キラーシークエンス”である、生きるか死ぬかの殺しに繋がるアクションシーンの美しさが見事だ。死の舞踊とでもいうべく、ボクスンとミンギュが脳内で、相手の先手を読みながら戦う芸術的なシークエンス。『マトリックス』を進化させたような演出技法が素晴らしい。本作に通底している、暗殺者を描くのではなく、キル・ボクスンの1週間を描きたかったという監督の意図が、このシーンでも表れている。
本作は、チョン・ドヨンが初めて挑んだというアクションシーンを存分に魅せるカメラワークや、演出技法から生み出された映像美を堪能するのも醍醐味だ。さらに、ピョン・ヒョンソン監督が大好きなクエンティン・タランティーノ監督の映画『キル・ビル』のパロディでもあるという『キル・ボクスン』というタイトルや、ある母親の1週間、それが殺し屋だったという、これまでのノワールとは違ったストーリーが、今後の韓国映画界で次世代に与える影響も楽しみな作品だ。
参考
https://top10.netflix.com/films-non-english
https://about.netflix.com/ja/news/interview-with-kill-boksoon-director-japan
■配信情報
Netflix映画『キル・ボクスン』
Netflixにて独占配信中
出演:チョン・ドヨン、ソル・ギョング、イ・ソム、ク・ギョファン、キム・シア、イ・ヨン
脚本・演出:ピョン・ソンヒョン
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