『水星の魔女』Season1にあった池井戸潤作品的面白さ 捨てないでほしい“ビジネス”描写
過去作と比べると『水星の魔女』は露悪的な描写は抑え目で、鬱展開に耐性のない若い視聴者に向けて、うまくチューニングされているように見えた。
しかし、最終話で激しい戦闘の末にスレッタが最後尾にみせた視聴者を唖然とさせる行動の後、Season2に続くという露悪的な流れは「これぞ大河内」と言いたくなる描写で、見事なクリフハンガーだった。
その意味で『水星の魔女』のSeason1は、学園アニメとして始まり、これまでの“ガンダム”が描いてきた宇宙戦争の入り口に辿り着いた所で終わったという印象で、新しい『ガンダム』の導入部としてはひとまず成功したと言えるだろう。
だからこそSeason2が、このまま戦争の世界に突入するのか、学園アニメとしての枠組みを保持した状態で進んでいくのかが気になるところなのだが、筆者としてはスレッタとミオリネがメカニック科の生徒たちと「株式会社ガンダム」を起業した展開をもっと掘り下げてほしい。
終盤の超展開が強烈過ぎたため、印象が霞んでしまった感が否めないが、会社を作りガンダムのテクノロジーを兵器ではなく医療技術として普及させようとする中盤の展開は『下町ロケット』(小学館)などの池井戸潤の企業小説を彷彿とさせる面白さがあり、戦争を通して少年の成長を描いてきたこれまでのガンダムシリーズとは違う新しい可能性を感じた。
学校と戦場の間にビジネスという中間領域を設定したことこそが『水星の魔女』の本領だと思うので、「株式会社ガンダム」という可能性を最後まで捨てないでほしい。
■放送情報
『機動戦士ガンダム 水星の魔女』
Season1:各種動画配信サービスにて配信中
BS11ガンダムアワーにて、毎週金曜19:00〜放送
MBS・TBS“アニメイズム”枠にて、毎週金曜深夜2:25〜放送
Season2:MBS/TBS系全国28局ネットにて、4月9日(日)スタート 毎週日曜17:00〜放送
企画・制作:サンライズ
原作:矢立肇、富野由悠季
監督:小林寛
出演:市ノ瀬加那(スレッタ・マーキュリー)、Lynn(ミオリネ・レンブラン)、阿座上洋平(グエル・ジェターク)、 花江夏樹(エラン・ケレス)、古川慎(シャディク・ゼネリ)
シリーズ構成・脚本:大河内一楼
キャラクターデザイン原案:モグモ
メインキャラクターデザイン:田頭真理恵、
キャラクターデザイン:戸井田珠里、高谷浩利
メカニカルデザイン:JNTHED、海老川兼武、稲田航、形部一平、寺岡賢司、柳瀬敬之
音楽:大間々昂
©創通・サンライズ・MBS
公式サイト:g-witch.net
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