『プーと大人になった僕』が思い出させてくれる大切なこと ディズニー実写映画の創造力

 同様の描写でいうと、筆者の中で深く感動するに至ったのは実写版『シンデレラ』(2015年)だ。主人公・エラが継母から酷い仕打ちを受け、国の舞踏会に行けなくなり悲しみに暮れていると、そこにフェアリー・ゴッドマザーが現れ、彼女を魔法でドレス姿に変える。クラシックアニメ版の『シンデレラ』を観たことがある人なら、そのシーンがいかにディズニー史に残る名シーンかご存じであるかとは思うのだが、世界随一のCGグラフィックと衣装技術を駆使して再現された完璧な変身シーンには思わず息を呑んでしまった。きらめく魔法の粒、破けたドレスから透き通るような青いドレスへと変わっていく瞬間。これだ、『シンデレラ』を心から愛する観客が夢に見た光景は――、と感じ入り、名シーンを見事に現代の映画へ蘇らせた製作陣たちの執念に似た熱意を感じたのである。

 また、『プーと大人になった僕』は原作『くまのプーさん』で主人公だったクリストファー・ロビンが大人になり、プーと再会するというストーリーであるため、いわば正式な物語の先を描いた作品である。2019年に公開された『メリー・ポピンズ リターンズ』も、前作『メリー・ポピンズ』(1964年)で子どもだったマイケルが大人になり、再びメリーと再会するまでを描いたストーリーなので、『プーと大人になった僕』とストーリーラインは共通した部分があるといえる。

 この2作には“大人になるにつれ忘れてしまっていた大事なことを思い出す”という、ディズニーが発信するからこその力強さが遺憾なく発揮されるメッセージ性があることも共通している。観客の幼少期(過去)の記憶を再び輝かせるだけでなく、今現在やこの先にある未来でどう生きていくか、どう希望を持って生きるかまでを、必要であるならば時代性も投影させて提示するのがディズニー実写作品の強みなのではないだろうか。

 過去と今、未来。大人と子ども。そういったものを全て包み込み、抱擁してくれるディズニーの作品たちは、これから産まれる子どもたち、そしてこれからを生きていく私たちの胸にいつまでも大切な記憶として残り続け、次の世代へと継がれていくことだろう。そんな輝きに満ちた作品、いつかどこかで会ったことのあるようなキャラクターたちに、今こそまた“会いに行く時”なのだ。

■放送情報
『プーと大人になった僕』
日本テレビ系にて、3月31日(金)21:00~23:09放送
※放送枠15分拡大 ※本編ノーカット
キャラクター原案:A・A・ミルン、E・H・シェパード
監督:マーク・フォースター
脚本:アレックス・ロス・ぺリー、トム・マッカーシー、アリソン・シュローダー
ストーリー:グレッグ・ブルッカー、マーク・スティーヴン・ジョンソン
製作総指揮:レネ・ウルフ、ジェレミー・ジョーンズ
出演:ユアン・マクレガー、ヘイリー・アトウェル、ブロンテ・カーマイケル、マーク・ゲイティス、ジム・カミングス、ブラッド・ギャレット、ニック・モハメッド、ジム・カミングス、ピーター・キャパルディ、ソフィー・オコネドー、サラ・シーン、トビー・ジョーンズ
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