松山ケンイチと長澤まさみが生む緊迫した空気 『ロストケア』を通して考える正義のあり方
リアルサウンド映画部の編集スタッフが週替りでお届けする「週末映画館でこれ観よう!」。毎週末にオススメ映画・特集上映をご紹介。今週は、長澤まさみと同じ1987年生まれの宮川が『ロストケア』をプッシュします。
『ロストケア』
65歳以上の高齢者が人口の約3割を占める高齢化大国・日本。介護をめぐる問題や事件もたびたび報道されるなか、この問題に鋭く切り込んだのが、第16回日本ミステリー文学大賞新人賞を受賞した葉真中顕の『ロスト・ケア』(光文社文庫刊)だ。生きていく上で誰しもが逃れられない“介護”というテーマに迫った犯罪小説が、『こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話』『そして、バトンは渡された』の前田哲監督によって映画化された。
主演を務めたのは、前田監督とは2007年公開の『ドルフィンブルー フジ、もういちど宙へ』や6月23日公開予定の『大名倒産』でもタッグを組んでいる松山ケンイチ。前田監督と10年ほど前からこの企画の映画化に向けて話し合っていたという松山が、介護士でありながら42人を殺めた殺人犯・斯波宗典に扮し、斯波を裁こうとする検事・大友秀を、『エルピス —希望、あるいは災い—』(カンテレ・フジテレビ系)での好演も記憶に新しい長澤まさみが演じている。
1985年生まれで2002年に俳優デビューした松山と、1987年生まれで2000年に女優デビューした長澤。年齢もキャリアも近い2人だが、意外にも映画・ドラマを含めて共演は本作が初。鈴鹿央士、坂井真紀、柄本明ら実力派が共演に名を連ねているが、見どころはなんと言っても終盤、長澤演じる検事・大友が、松山演じる斯波に取り調べを行う2人きりのシーンだ。松山と長澤の魂のぶつかり合いとも言える鬼気迫る演技が、“正義とは何か”という映画のテーマを我々観客に突きつけてくる。