『零落』端役まで恐ろしいほど絶妙なキャスティング 斎藤工が流す涙にえぐられる
そして、深澤に“呪い”をかける新人漫画家時代に交際していた“猫みたいな目をした”女性役の玉城ティナ、風俗嬢・ちふゆ役の趣里は、説得力があり過ぎて、あれはずっと囚われてしまうとうなずくしかありません。そのほか、MEGUMIに安達祐実に山下リオまで、恐ろしいほどの絶妙さ。その中でも個人的にすごかったのが、深澤に取材をするライター役の志磨遼平。本作の主題歌も担当しているように、本業はミュージシャンながら、『今際の国のアリス』(Netflix)でも出演シーンは短いながらもものすごい存在感でした。その世界への順能力が高すぎる役者であり、今回のライター役も絶品です。
ものづくりや自己表現に多少なりとも携わる方は、本作を観て大きなダメージをくらうかもしれません。深澤が感じた孤独ややるせなさ、周囲に分かってほしいのに分かってもらえないもどかしさは、きっと自分ごとになってしまうはずなので……。ただ、“救い”になるのか、突き放されるのかは人それぞれだと思いますが、深澤が流す涙が心の何かを浄化してくれるはずです。漫画や映画、小説に「救われました!」って言うのは、なかなか残酷な言葉でもあるなとしみじみ感じました。個人的には原作漫画を読んでから映画を観るのがオススメです。
■公開情報
『零落』
テアトル新宿ほかにて公開中
出演:斎藤工、趣里、MEGUMI、玉城ティナ、安達祐実、山下リオ、土佐和成、永積崇、信江勇ほか
原作:浅野いにお『零落』(小学館『ビッグスペリオールコミックス』刊)
主題歌:ドレスコーズ「ドレミ」(EVIL LINE RECORDS)
監督:竹中直人
脚本:倉持裕
製作幹事・配給:日活、ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:ジャンゴフィルム
製作:「零落」製作委員会(日活、ハピネットファントム・スタジオ、小学館)
©2023浅野いにお・小学館/「零落」製作委員会
公式サイト:https://happinet-phantom.com/reiraku/