ミニオンを生み出したイルミネーションが大躍進 映画『スーパーマリオ』にも高まる期待

ミニオンの生みの親・イルミネーションが躍進

 奔放でハイテンションなルーシーは、奥手で鬱屈したところのあるグルーとは対照的。『ミニオンたちの世界』によればグルーとの関係を、セルジュ・ゲンズブールとジェーン・バーキンのようなものにしたかったという。年配者にはなるほどと思えるところもある配置だ。アニメーション好きの若者に留まらず、『怪盗グルー』シリーズが幅広い年代に受け入れられているのは、こうした目配せがあるからなのかもしれない。

 『ミニオンたちの世界』にはほかにも、キャラクターデザイナーでアートディレクターのエリック・ギロンを中心に、クリエイターたちがキャラクターや背景やガジェットのひとつひとつに綿密な設定を行ってデザインしていることが紹介されている。これにキャラクターの豊かな表情や仕草であったり、ジェットコースターのようなアクションであったり、起伏に富んで、最後は喝采を送りたくなるストーリーを掛け合わせることで生まれるイルミネーションの世界が、万人に喜ばれないものになるはずがない。

ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー
『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』©2022 Nintendo and Universal Studios

 だからこそ、公開が近づく『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』への期待も高いものとなっている。原作は任天堂の世界的人気ゲーム。過去に2Dのアニメーションや実写映画として映像化されたことはあるが、今回はNINTENDO64向けの『スーパーマリオ64』で3D化され奥行きを持った「スーパーマリオ」の世界が、四半世紀を経て超進化したようなビジョンでスクリーンに描き出される。そこにイルミネーションの技術が載れば、表情でもアクションでも見たかったものが見られるに違いないという確信があり、実際に予告編でそうした期待を満たしてくれている。

 『怪盗グルー』シリーズにしても『SING/シング』にしても、オリジナルでキャラクターを起こし世界を創造し、ファンを引き込んで来たイルミネーションにとって、すでに存在して強い先入観を全世界の人が抱いている『スーパーマリオ』に挑むことは、これまでにない挑戦かもしれない。一方で、どれだけ優れた作品を送り出してもアニー賞にもアカデミー賞にもノミネート止まりのイルミネーションにとって、次のステップへと至るきっかけになる可能性もある。

 成功すれば、当然続編の話が浮上するだろう。任天堂が持つ他のIP(知的財産)についても映画化の話が出てくるかもしれない。イルミネーションCEOのクリス・メレダンドリが任天堂の社外取締役となって関係を深めているのも、そうした将来を伺ってのものといえる。任天堂とイルミネーション、そしてユニバーサルが手を組み生み出すエンターテインメントの世界は、ディズニーやピクサーやドリームワークスに負けず劣らないワールドとなるだろう。

 そこへと至る幕がまもなく開く。

■放送情報
『怪盗グルーのミニオン危機一発』
日本テレビ系にて、2月24日(金)21:00~22:54放送
※本編ノーカット
監督:ピエール・コフィン、クリス・ルノー
製作:クリス・メレダンドリ
脚本:シンコ・ポール&ケン・ダウリオ
声の出演:笑福亭鶴瓶、中島美嘉、芦田愛菜、中井貴一、須藤祐実、矢島晶子、伊井篤史、宮野真守、山寺宏一
©2013 Universal Studios. All Rights Reserved.

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