『大奥』仲里依紗が恋に生かされ、殺される 欲望渦巻く「綱吉・右衛門佐編」が終幕

 有功に打掛を羽織らせてもらったことで本来の自分になれた三代将軍家光(堀田真由)。その家光との間に生まれた男女の業から解き放たれることを望んだ有功。綱吉や右衛門佐とは何もかも違っているようで、両者とも最後はひとりの人間として愛し、愛されることを願った。何の目的もなく褥を共にしたふたりのことを家光と有功が責めるはずなどない。そのことについぞ気づけなかった桂昌院。彼もまた春日局(斉藤由貴)と同じく、移り変わる世に取り残されたひとりだったのだろう。悲しく哀れなのは綱吉の側用人である吉保(倉科カナ)も。彼女も綱吉に恋した一人であったが、欲得なく自分を愛してくれたのは右衛門佐だけと言う綱吉を最後は自ら手にかけた。その光景はおぞましくも、吉保の「佐には会えましたか?」という本懐を遂げた後の語りかけがあまりに優しく、行為自体、右衛門佐に先立たれた綱吉を思ってのことだったように感じさせる。

 人々の欲望や思惑が渦巻く「五代将軍綱吉・右衛門佐編」は仲里依紗や山本耕史をはじめとした役者陣の演技の応酬が見どころであった。腹の底が見えぬ恐ろしさがあり、だからこそ時折顔を覗かせる純粋さに多くの人が心打たれたことだろう。次回は再び、吉宗の時代へ。ついに赤面疱瘡の解決に動き出す。

■放送情報
ドラマ10『大奥』
NHK総合にて、毎週火曜22:00~22:45放送
出演:福士蒼汰、堀田真由、斉藤由貴、仲里依紗、山本耕史、竜雷太、中島裕翔、冨永愛、風間俊介、貫地谷しほり、片岡愛之助ほか
原作:よしながふみ『大奥』
脚本:森下佳子
制作統括:藤並英樹
主題歌:幾田りら
音楽:KOHTA YAMAMOTO
プロデューサー:舩田遼介、松田恭典
演出:大原拓、田島彰洋、川野秀昭
写真提供=NHK
©よしながふみ/白泉社

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