『終末のワルキューレ』なぜ神と人類の戦いが世界で熱狂を生む? 寛容な宗教観の“新鮮さ”
これは世界的にヒットしている『鬼滅の刃』においても、敵として描かれている鬼の背景描写を丁寧に描くことで鬼に感情移入してしまうのと類似している。こうしたキャラクターの緻密な背景描写が単なるバトルアクションアニメとは一線を画している部分であり、神VS人類という対立構造をより深みのある人間ドラマとして成り立たせている。
しかし、こうした神を扱う上で注意しなければいけないのがやはり宗教上の問題。ヒンドゥー教におけるシヴァやキリスト教におけるアダムらが登場することもあり、第1期の放送時点ではその描かれ方について海外では様々な反応が上がった。だが、そうした状況のなかでも、海外でヒットしているのはやはり馴染みのある宗教の登場人物や文化的背景があるからにほかならない。日本の宗教への寛容な姿勢から生まれたドメスティックな作品である一方で、それが逆輸入的に新鮮な視点で海外では観られているのだろう。
さらに、Netflixという配信形態についても触れなければならない。本作は第1期からNetflixで先行配信の形を取っており、かねてからグローバルへと目を向けた作品と言える。今やNetflixは190カ国以上で視聴されており、グローバル展開をするのに最も適したコンテンツなのは言うまでもない。そこに神VS人類という明確でわかりやすい構造と、世界共通の普遍的なテーマが相まって大ヒットを可能にしている。
第2期は全15話という構成になっており、第2期の第10話ではジャック・ザ・リッパーVSヘラクレス、雷電為右衛門VSシヴァの戦いが描かれた。これから配信される第11話以降にはファンからの人気もある釈迦が登場することで期待も大きい。『終末のワルキューレ』が国内外で作り出したファンダムはこの先も続いていきそうだ。
■配信情報
『終末のワルキューレII』
Netflixにて配信中
原作:『終末のワルキューレ』(作画:アジチカ、原作:梅村真也、構成:フクイタクミ/『月刊コミックゼノン』コアミックス)
監督:大久保政雄
出演:ブリュンヒルデ:沢城みゆき、ゲル:黒沢ともよ、ジャック・ザ・リッパー:杉田智和、ヘラクレス:小西克幸、雷電為右衛門:木村昴、シヴァ:鈴木達央、釈迦:中村悠一
シリーズ構成:筆安一幸・山田由香
キャラクターデザイン:佐藤正樹
音楽:高梨康治
音響監督:えびなやすのり
アニメーション制作:グラフィニカ×ゆめ太カンパニー
オープニングテーマ:美波「ルードルーズダンス」 (ワーナーミュージック・ジャパン)
エンディングテーマ:小野正利「祈」(ワーナーミュージック・ジャパン)