バディ映画好き必見! 『君に幸あれよ』に宿る、時代を生き延びるための“叫び”

 さらに本作が特徴的なのは、大体のシーンがフィックスで撮影されていて、光と影の切り取り方や、遠景と近景の処理など、どのシーンをとっても1枚の画として美しいこと。本作が初監督・脚本となった櫻井圭佑は写真家としても活躍しており、画作りに対してのこだわりを強く感じられる。画そのものの説得力と俳優陣の生き生きとした演技を見ると、キャストとスタッフ陣の間に深い信頼関係があることが予想できる(本作はほぼ20代のスタッフのみで撮影されている)。(※)

 そして迎えるラストシーン。撮影当時25歳の櫻井監督が何を考えてこのシーンを撮ったのか、ひいては本作を企画・制作したのか。このワンシーンに込められた“叫び”が心に響く。

 今の世の中、キラキラした人の話や情報はたくさん耳に届く。だけど実際はそうではない日々を過ごす、“映えない”人生を送っている人たちばかりだ。本作が、そんな私たちにとっての救いとなるか、活力となるか、はたまた観ていて辛い作品になるかは受け取り手次第。しかし、この映画が持つ熱は劇場でこそ存分に味わえるし、新しい作り手が世に出る瞬間を目撃する意義がある作品だ。

『君に幸あれよ』特報【2023年公開】

参照

※ https://kimisachifilm.com/

■公開情報
『君に幸あれよ』
2月4日(土)より、渋谷ユーロスペースほか全国順次公開
監督・脚本・編集:櫻井圭佑
出演:小橋川建、髙橋雄祐、玉代勢圭司、久場雄太、浦山佳樹、鈴木武、二宮芽生、松浦祐也、中島ひろ子、諏訪太郎
アソシエイトプロデューサー:前信介
プロデューサー:小橋川建、櫻井圭佑、髙橋雄祐
配給・宣伝:MAP
2022/日本/カラー/78分
©︎映画「君に幸あれよ」製作委員会
公式Twitter:@kimisachi_film

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