『ワタシってサバサバしてるから』制作統括が明かす、実写化を成立させた丸山礼の凄さ

いつの日か、誰かをエンパワーできる作品に

――中山さん自身は、網浜のような人が身近にいたらどう思いますか?

中山:難しいところですね。たしかに網浜は周りに迷惑をかけたり、悪いこともたくさんしているんですが、一方でそんな網浜が排除される世の中は嫌だなと思います。漫画でもそうなんですが、網浜って排除はされないんですよ。それはやっぱり、魅力があるからだと思います。

――実際、本多力さん演じる米沢の台詞にもありましたが、網浜には自己肯定力の強さなど、見習うべき点が多々あります。

中山:網浜ってよく「みんなって誰よ?」って言うじゃないですか。本当にそれはそうで、誰かもよくわからない人たちのことを意識するが故にやりたいことがやれなかったり、傷ついたりするのって実は意味がないこと。そのことを網浜は鋭く突いていると思うんです。もちろん、彼女がやっていることは褒められたことではないので全肯定はしませんが、そんな彼女を受け入れて、共存していく寛容さがこれからの社会には必要なんじゃないかなと思います。

――周りの人たちも網浜を本気で嫌がることなく、一つのキャラとして受け入れている感じがとても気持ちがいいです。

中山:トリンドル玲奈さん演じる本田もそうなんですが、みんな網浜に対して「嫌なことは嫌」って言ったり、ちゃんと主張しているんですよね。一方で排除はせず、受け入れている。そこにすごく愛情を感じますし、網浜みたいな人にもそういう風に接することができたら楽しく生きていける気がしますね。

――『ワンナイR&R』(フジテレビ系)や『笑う犬』(フジテレビ系)などのコント番組を手がけてきた伊藤征章さんの演出も本作の見どころになっています。

中山:とにかく笑わせるためにどれだけ苦しい思いをしたんだろうと伊藤さんの心中を慮ります(笑)。例えば、網浜が「私は高みを目指そうと思う」と言いながら、トイレのドアを使って天井まで這い上がるシーンがあるんですが、そういう「高みってそういう意味じゃないから!」と思わず突っ込んでしまうような面白いシーンを常に考えていたと思うんですよね。

――かなりアドリブも多いように思うのですが……。

中山:多いですね。個人的に何度も笑っちゃうのが、第1話の合コンのシーンで、本田が網浜に「面白い話しろ」と言われるんですが、あの辺のやりとりは全てアドリブです。いきなりトークを振られても咄嗟に対応できるトリンドルさん、ハート強いなって感心しました(笑)。

――丸山さんの豊かな表情にも毎回笑わされています。

中山:網浜の表情は一番の見どころだと思っています。私は今回のように原作がある場合、そこに描かれている本当のメッセージや良さを分析するところから始めるんです。大抵、その作業をないがしろにすると上手くいきません。じゃあ、今回はこの作品のどこが本当の面白さで、大切にしなきゃいけないところなのかを考えた時に、「網浜の表情の豊かさだ」と思ったんです。丸山さんは最初の打ち合わせの段階から「これは顔が大事ですね」と気づいていらして、相当練習してくださったと思うんですが、いつも一度観たら忘れられない網浜の表情を忠実に再現してくださるので助かっています。

――原作自体がまだ最終回を迎えていない中で、ドラマがどんなラストを迎えるのか。今後の見どころを教えてください。

中山:網浜の行動はいつも我々の想像の範疇を超えてきましたが、最後は今まで以上に驚くべきことが起きます。今のは何だったの?と思うようなラストなので、飲み込めなかった場合はぜひNHKプラスやオンデマンドで観ていただければ(笑)。そんな最後まで驚きと笑いに包まれる内容になっている一方で、若い人たちへの強いメッセージを内包しているつもりです。観た時は何も思わなかったけど、何年後かにそこに描かれたメッセージが心に響くということが多々あると思います。『ワタサバ』も今は大いに笑っていただいて、いつの日か誰かを「大丈夫」とエンパワーできるようなドラマになったら嬉しいです。

■放送情報
夜ドラ 『ワタシってサバサバしてるから』
NHK総合にて、毎週月曜~木曜22:45~放送(各話15分)【全20回】
出演:丸山礼、トリンドル玲奈、犬飼貴丈、栗原類、鞘師里保、本多力、若月佑美、小林涼子、佐々木史帆、和田正人、マギー、山田真歩、栗山千明、笹野高史、“お魚さん”(ナビゲーター)、アンミカ
原作:とらふぐ、江口心『ワタシってサバサバしてるから』
脚本:福田晶平
音楽:信澤宣明
制作統括:中山ケイ子(FCC)、訓覇圭(NHK)
プロデューサー:大瀬花恵(FCC)
演出:伊藤征章(FCC)
©NHK
公式サイト:https://nhk.jp/watasaba

関連記事