広瀬すず×永瀬廉を夕日が包み込む 『夕暮れに、手をつなぐ』が切り取る“落日の瞬間”
『夕暮れに、手をつなぐ』(TBS系)の第1話で印象的だったのは、夕日が照らし出す映像の美しさだった。音(永瀬廉)が空豆(広瀬すず)と出会ったのも日が傾きはじめた黄昏時。同じ曲を聴いていたイヤホンを取り違えるという奇跡的な偶然にもかかわらず、彼らは通り過ぎていく。
なぜなら、そのとき空豆の隣にはすでに翔太(櫻井海音)の存在があったから。空豆と翔太の思い出も夕日に彩られている。クラスでいじめられそうになっていた空豆が、翔太が出したアイデアのおかげで学校の人気者になることができた。それを喜びながら自転車で二人乗りをした田舎道。さらに、翔太からもらった初めての指輪。そして、プロポーズの言葉……。
若い2人の小さな恋の物語は、まさに青春のきらめき。左手の薬指にはめられた指輪を太陽に掲げて、うっとりとした空豆の嬉しそうな顔に、他の人が入る隙間なんて1ミリもなかったように思えた。でも、これは空豆の回想する思い出のシーンだけだったのかもしれない。
翔太にとっては、懐かしい田舎の出来事としてすでに過去のものになってしまっていたようだ。翔太を追って東京へやって来た空豆に突きつけられた別れの言葉。もう自分の体の一部のようになっていた指輪を外す日が来るなんて思いもよらなかった空豆は、橋の上で呆然としてしまう。そんな空豆のことも、変わらず夕日が包み込む。
毎日、同じようにやってくる落日の瞬間。しかし、その景色は自分の心境によって大きく変わってくる。キラキラと眩しいほどに充実感を得る日もあれば、とっぷりと沈んでいく太陽に置いていかれてしまうような孤独感や、何も手に入れることができていない焦燥感に襲われることも。
きっと、夕暮れは自分自身と向き合う時間なのだろう。1日の終わりに。または、青春のひと区切りに。あるいは、人生の先を見据えたタイミングで。うまくいったこと、そうではなかったことが思い返され、また明日への不安と期待が入り交じる時間だ。そんなときに、誰かと手を取り合うことができたならそんなに幸せなことはない。