『思い出のマーニー』に込められた“愛”を探る 杏奈にとって“許す”ことの意義とは
そんなマーニーのたおやかな愛が杏奈にしっかりと届いたことは、物語のラストの展開だけでなく、杏奈のスケッチブックが証明している。
杏奈はスケッチブックに絵を描き続けているが、その絵はどれもモノクロだ。しかし、物語の後半に登場する頼子への手紙やマーニーのスケッチブックには、鮮やかな色が使われるようになる。葛藤を乗り越えた杏奈の世界には、感情溢れる色鮮やかな景色が広がるようになったのだ。または杏奈が周囲を自分の世界として受け入れ、「色をつけてもいい」と感じたからかもしれない。
“許す”という言葉は、不当な扱いに対して態度の変化を経験し、否定的な感情を乗り越える意味を持つ。マーニーはあのシーンのセリフを通して、これから先辛いことがあった時も杏奈が前を向いて乗り越えていけることを、彼女の言葉で最後に聞きたかったのだろう。
「もちろんよ! 許してあげる! あなたが好きよ! マーニー!」
マーニーが許しとして受け取ったのは、杏奈からの「もう大丈夫」という前向きなメッセージだ。
杏奈に“許された”マーニーが残した愛は、時を越えて杏奈と私たちを優しく包み込んでくれる。先の見えない現実を生きていくことは、ときに苦しく、想像以上の暗闇を感じてしまうこともあるだろう。ひとりで静かに孤独をかみしめる夜にこそ、マーニーのまっすぐな眼差しを思い出してほしい。
■放送情報
『思い出のマーニー』
日本テレビ系にて、1月13日(金)21:00~23:09放送
※放送枠15分拡大 ※本編ノーカット
脚本・監督:米林宏昌
脚本:丹羽圭子、安藤雅司
声の出演:高月彩良、有村架純、松嶋菜々子、寺島進、根岸季衣、森山良子、杉咲花、
吉行和子、黒木瞳
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