目黒蓮、『舞いあがれ!』で示した俳優としてのプロフェッショナルさ 緻密な分析力が光る

 思いもしなかった展開が続く朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK総合)において、これからの動向がもっとも気になる目黒蓮。ヒロイン・舞(福原遥)が故郷の東大阪にいるため、目黒が演じる柏木は恋人でありながら出番が一気に減りつつあるのが現状だ。物語全体に漂う苦しい空気。彼の動きによって流れは変わるのだろう。ここで一度、“目黒=柏木”が本作で残してきた功績を整理してみたい。

 柏木が初めて登場したのは「航空学校編」でのこと。周囲の誰からも愛される舞が航空学校へと進むことを決意した直後、その強い意志を叩き崩そうとしたのが彼であった。本作的には数少ない、いわゆる「イヤなヤツ」であり、それなりに順風満帆な人生を歩んできた舞が自ら選んだ苦難の道の、最初の壁といえるものだったのではないだろうか。演じる目黒の鉄仮面と棘のあるセリフの語調は、いち視聴者としても気持ちのいいものではなかった。

 その後に柏木は航空学校でできた仲間たちと夢に向かって青春を謳歌し、ついには舞の恋人にもなった。基本的にいつもクールなキャラクターであることに変わりはないが、物語の展開に合わせて彼の声や表情は繊細かつ豊かに変化しているのを誰もが感じていたと思う。柏木が舞や私たち視聴者に与えたファーストインプレッションと、いま彼に抱いている印象はまるで異なるものだろう。急に恋愛要素が導入された際には呆気にとられてしまったが、目黒は柏木の感情のグラデーションを場面に合わせて表出させ、福原との二人三脚で健闘していたものだ。

『舞いあがれ!』目黒蓮と吉川晃司は似た者同士? 舞を支える不器用な優しさ

あれ、柏木学生(目黒蓮)と大河内教官(吉川晃司)って似てるのか?  そう思い始めたのは、『舞いあがれ!』(NHK総合)第50話…

 本作の公式ガイド『連続テレビ小説 舞いあがれ! Part1』(NHK出版)で目黒は柏木役について「その成長過程を表すため、柏木の感情を整理して一つ一つ段階を踏むよう意識しながら演じています。撮る順番は前後しますが、つながるように1シーンごとに計算して演じるのが楽しくて。完成形を思い浮かべ、そこに向かってコツコツと積み重ねることに楽しさを感じています」と述べている。やはりそうなのだ。目黒は柏木という人物を分析・考察し、そのキャラクターをロジカルに組み立て、自ら作品にフィットしていく演技を実践していたようである。

 たしかに、柏木はスポットの当たる主要人物の一人ではあるが、『舞いあがれ!』はヒロインである舞の物語だ。主軸のストーリーラインを強固なものにするため他の登場人物にフォーカスする瞬間は多々あるが、それでも繰り返すように、これは舞の物語なのである。彼女の周囲のキャラクターを演じる者たちは、自らどのようにヒロインと、ひいては作品と関わるべきかを思案し、それを実際の演技に移していかなければなならない。1話だけ登場するゲストならまだしも、あまりにも自由な振る舞いは許されない。脇を固める者たちは誰もが、脇を固めることに徹さなければならないだろう。

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