『女神の教室』が主題として掲げる“想像力” 教育方針が異なる北川景子と山田裕貴の対比

 左手の天秤は“公平”と“平等”を、右手の剣は“公平な裁判によって正義を実現するという強い意思”を。ギリシャ神話に登場する女神であり、日本においては最高裁にあるブロンズ像が有名なテミス。1月9日にスタートしたフジテレビ系列月9ドラマ『女神の教室〜リーガル青春白書〜』。“女神”と書いて“テミス”と読ませるからには、テミス像が持つ天秤と剣の両面を教える“教室もの”、すなわちロースクールが舞台となることを示しており、さらに副題で“リーガル”と“青春”というドラマジャンルとしてのふたつを強調する。ここ最近の月9は職業ものかミステリーかの2ジャンルに偏っていただけに、良い味変になってくれることだろう。

 効率よく仕事をこなすことができない裁判官の柊木雫(北川景子)は、突然ロースクールの派遣教員としての勤務辞令を受ける(劇中でも触れられた法科大学院派遣法の第3条に明記されている通り、このようなことはあり得る話である)。そうして青南大学法科大学院で刑事訴訟法基礎を担当することになる柊木。しかし学生たちは司法試験対策に必要がない実務の話にまったく興味を示さず、赴任して早々反感を買ってしまう。そんな学生たちから支持されているのは、徹底的に無駄を省いた効率重視の授業を行う藍井(山田裕貴)。教育方針の異なる柊木と藍井は、学院長の守宮(及川光博)の提案で、実務演習として模擬裁判を行うことになるのである。

 裁判官を題材にした『イチケイのカラス』(フジテレビ系)、検察官を題材にした『HERO』(フジテレビ系)、また弁護士を題材にしたドラマは数えきれないほど多くあるので省くが、そのいずれもが書類に記された証拠ではわかりきれない事件・事案の真相を追求していく者たちのドラマであり、それがフジテレビ的なリーガルドラマの様式美ともいえる。それは法曹三者になる前の前の、そのまた前の段階であるロー生たちの物語である本作でも限りなく同じにおいを感じさせる。

 とはいえ決定的に異なっているのは(少なくとも第1話の時点において)、ロー生たちが取り扱う事案をドラマとして描くうえで、先に挙げた従来のリーガルドラマには決まって存在していたような実像が提示されないことである。あくまでも彼らは、XとYという記号に対峙しながら、判例について議論を重ねていくだけにとどまる。もちろん実務ではない勉学の面を描くドラマである以上、そうなっても当然のことだ。そこで終盤、柊木は模擬裁判に参加した5人の学生たちを連れて、友人の弁護士事務所を訪れる。

「どの事案にも必ず人がいる」。その柊木のセリフにあらわれている通り、このドラマが主題として掲げるのは“想像力”なのであろう。司法試験にパスするという至上命題に向けて合理的に行う勉強は間違ってはいないが、その先で必ず人間にも向き合うことになる。そうした法曹者としての成長を見せると同時に、視聴者にもXとYでロー生が向き合っている事柄に、同じ視点から思いをめぐらせることを可能にしていく。これはなかなか挑戦的ではないか。ちょうど20年ほど前に同じ月9で放送された『ビギナー』(フジテレビ系)は司法修習生を描いたドラマだったが、それに近いアカデミックで秀逸なリーガル青春ドラマになりそうな予感がする。

■放送情報
『女神の教室~リーガル青春白書~』
フジテレビ系にて、毎週月曜21:00~21:54放送
出演:北川景子、山田裕貴、南沙良、高橋文哉、前田旺志郎、前田拳太郎、河村花、佐藤仁美、宮野真守、小堺一機、尾上松也、及川光博
脚本:大北はるか、神田優
プロデュース:野田悠介
演出:澤田鎌作、谷村政樹
音楽:武部聡志
主題歌:Vaundy「まぶた」(SDR)
法律監修:水野智幸(法政大学大学院法務研究科)
制作・著作:フジテレビジョン
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