『必殺仕事人』はベテラン俳優から学べる若手育成所? 受け継がれる50年の歴史

 1月8日21時より放送される東山紀之主演のスペシャルドラマ『必殺仕事人』(ABCテレビ・テレビ朝日系)は、1972年の『必殺仕掛人』から始まり、50周年を迎えた『必殺』シリーズの最新作。大きな節目となる今作は7年間レギュラー出演していた遠藤憲一が卒業することが発表され、放送前から注目が集まっている。

 『必殺』シリーズは、弱者の晴らせぬ恨みを晴らす闇稼業に就く人々の活躍を描いた松竹制作の時代劇。これまでの勧善懲悪の時代劇とは一線を画し、あくまでお金のために殺しをするアンチヒーローというハードボイルドな作風だったが、1979年から藤田まことさんが町奉行の同心・中村主水を演じる『必殺仕事人』がスタートしてからはより娯楽性が増し、お茶の間向けに徹した作風で人気を博し、『必殺』ブームを呼んだ。

 その魅力は、それぞれ必殺技を持つ仕事人たちがチームプレイで悪を退治していく、現代のマンガやハリウッド映画にも通じるチームものの面白さにある。藤田さんや昭和の大女優・山田五十鈴がレギュラーを務める中で、当時若手だった三田村邦彦、京本政樹、村上弘明たちがベテラン俳優たちの中で時代劇を学び、実力派俳優としてブレイクしていく。

 また、娯楽に特化していったことで、スペシャル版では1985年の『必殺仕事人意外伝 主水、第七騎兵隊と闘う 大利根ウエスタン月夜』で、主水が西部開拓時代のアメリカにタイムスリップする話など、何でもありな世界観なのも必殺ならではの展開も。藤田さんのドラマ出演は東映制作の『はぐれ刑事純情派』(テレビ朝日系)へシフトチェンジし、1991年〜1992年の『必殺仕事人・激突!』(テレビ朝日系)で一旦終了する。それから15年、藤田さんからバトンを受け継ぎ、2007年にスタートした東山紀之主演の『必殺』シリーズは、SNSの怖さやオレオレ詐欺など時事ネタを折り込みつつも、原点回帰とも言うべきハードボイルド路線となり、正月恒例のスペシャル時代劇として15年続いている。

 本作は東山が仕切るようになってからも、藤田さんや野際陽子さんが亡くなるまでレギュラーを務め、高橋英樹や里見浩太朗といった時代劇スター、西田敏行、奥田瑛二、黒木瞳といった大御所をゲストに迎えてきた。ジャニーズの若手や旬のゲスト俳優にベテラン俳優の所作や矜持、時代劇を経験させ、俳優育成を担う貴重な番組とも言える。

 主演を交代してからも藤田さんは亡くなる直前まで出演し、『はぐれ刑事』で城島茂や村上信五(関ジャニ∞)が藤田さんの役者に対する姿勢を学んでいったように、東山版の二大看板である東山と松岡昌宏らが藤田さんの魂を引き継いでいく。2007年に時代劇に初挑戦した大倉忠義(関ジャニ∞)は、2016年に出演した『行列のできる法律相談所』(日本テレビ系)で藤田さんとのエピソードを語り、スタッフからダメ出しをされた時に「大倉くん、いいよ。きみは、カメラの向こうのお客さんの顔が見えてる」と褒めてくれて以来、自分の出番がない時でも藤田さんの演技を見て勉強したことや、2009年に大倉が劇中で殉職することになり、藤田さんが「大倉くんを殺すなら俺を降ろせ」とプロデューサーに直談判したことを知り「もっと努力しなきゃいけない」と決意したことなど、俳優として藤田さんから多大なる影響を受けたことを語っていた。

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