青野竜平×田中真琴×片山享監督が語る『道草』の役作り “役者ならでは”の視点を明かす

青野竜平、田中真琴らが語る『道草』の役作り

 シモキタ - エキマエ - シネマ『K2』にて公開中の映画『道草』より、キャストインタビューコメントが公開された。

 本作は、俳優事務所であるハイエンドが製作する映画第二弾。監督を務めたのは、10月1日より公開された第一弾『わかりません』に引き続き片山享。本作が、2022年に片山が製作した五本目の長編となる。

 凡庸に生きてきた画家が他人の絵・評価・価値観に翻弄されていく様を通じて、「自分らしさとは何か」「価値とは何か」というテーマを巡る物語。その問いに飲み込まれていく画家・榎木道雄を演じるのは、ENBUゼミナール シネマプロジェクト発の映画『河童の女』で映画初出演にして主演を務めた青野竜平。ヒロインとなる富田サチは、映画、ドラマ、舞台に出演する田中真琴が演じた。そのほか、モデルとしての活動に加え、映画『PARALLEL』のTaoや、大宮将司、谷仲恵輔、山本晃大、入江崇志らが出演している。

道草

 本作の着想を得たきっかけについて、片山は「まだ映画を監督する前、役者だけをやっている時、自分の評価は自分で上げていかなきゃいけないと思っていました。むしろそれに躍起になっていたように感じます。その後、映画監督をするようになったのですが、僕としてはやりたいことをやろうと思って始めたことでしたが、自分が思っているよりも評価を受けました。そしたら、周りの人から見た僕の姿が変わっていきました。僕自身は性格も変わらない、考えていることもあまり変わらないし、金銭的な状況も変わらないけれど、周りから見た自分の価値みたいなものが上がっていって、それにすごく疑問を抱きました。もちろんありがたいことなんです。けど、何かこういうところで自分を見失うんだなって感じました。他人の価値が自分の価値になっていくみたいな。そこはちゃんと差別化をしないと自分が自分でいられなくなる気がして、それが今回の映画の着想になっていきました。今回は俳優としての所属事務所でもあるハイエンド製作第2弾で、その企画会議の時にこの“価値”の話をしたんですが、たまたまそのタイミングで事務所の代表である大松が画家の大前光平さん(劇中に出てくる抽象画の作者)に出会った話をしていて、絵画の価値というのも似ているものがあるかもしれないねって話になってこの物語が出来上がっていきました」と語る。

 そんな片山の脚本を読んで、青野と田中は何を感じたのか。青野は、「僕は確か初稿から読ませてもらっていて、初めて読んだ時にすっと腑に落ちて入ってきたんです。感覚的ですが、すごく匂いを感じる脚本だなって思いました。僕の頭の中で情景描写ができた部分がありましたし、脚本段階でも映画の余白というか余韻のようなものがありました」と、情景が浮かんできたと語った。

 そして田中は「私は脚本を読んでみて、誰が演じるかによってサチの印象が大きく変わりそうだなって思いました。なので、自分がどう演じるかで右にも左にも行けるというか、監督と話していく中でもそうですけど、サチは何か振り幅がある人だと感じていました。それをどのようにイメージを固めるかじゃないですけど、人物像を作っていくのが楽しかったです。結果的には自分にかなり寄ってしまったところもあるかもしれないですけど、私にとってはありそうでない話でもありました。私にとって真っ直ぐな恋愛っていうのがあんまり大人になってからなかったなって思ったので。真っ直ぐな恋愛というより、素朴な恋愛ですかね。飲みの場で最初に会ってないとか(笑)。そういう学校の出会いみたいな真っ白な恋愛のスタートを大人になってからしてなかったので、それを大人の女性と男性がしている中の生活感、世界感っていうイメージがわかなかったのですが、一回委ねて現場入ってみて何か良かった」と、サチの人物像が現場で補完されたと明かした。

 演じる役とそれぞれが似ている部分について、青野は、似ているところがたくさんあったと明かした。

「そもそも絵を習ったことがなかったので、撮影の3カ月ぐらい前から絵を習いに行きました。学んでいく中で何か自分に馴染んできている瞬間があって役を演じる上での実感が湧きました。それに、役と共鳴するところはたくさんあって、例えば鈍臭いとか(笑)。あと喜怒哀楽がわかりやすい感じは自分と似ているなって思いますし、何かちょっと逃げ癖があるような弱いところも似てるなと感じましたね」

 田中は「私はそれこそ価値の話になりますけど、みんなが良いって言うから良いとは私はあまり思わないです。普段から好きなものは好きだし、どんなに流行っていても自分が変だなって思ったら着ない服もありますし、そういう価値に対する見方はサチと一緒だなって思いました。自分がいいと思った絵は、どんなに売れなくても絶対に良いっていう自信があるし、それは私が普段から思っていることでもあるし、自分がそういう人間だって気づいてからはその感情を大切にしたいなって思っている部分ですね。サチと違うのは、私は割とストレートに伝える性格で、いいこともあれば悪いこともあるんですけど、サチは精神的に成熟していて、きちんと相手のことを見ながら伝えようともしてくれる。それが自分本意ではなくて、相手のためになるだろうと思いながら優しく諭すようなところが私にはないなって思いました。『楽しい?』って聞くところとか、あの聞き方は私だったら絶対にしないなって思いました」と、似ている部分とそうでない部分を明かした。

 田中に対して、片山が「自分だったらなんて言うの?」と質問すると、「本当に描きたいの? とか、もっとまっすぐ伝えると思います。最初に「無題」の絵を見た時に、あれ好きなん? とか、あれ良いと思って描いたん? とか、まず最初に聞くと思います。でもサチは本当にいいと信じた上で話すところが私と違うなとは思いますね。大人な感じ。あと、女性としてこの役柄をやった上で、絶対に悪いのは道雄ですけど、私もきっと最後はみんなに同情されたいし、よくやったって慰められたいタイプだから、サチと同じようにああいう風に強がって前を向くと思いました。もしかしたら女性の方は結構同じ気持ちになるのかなって思います」と返答した。

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