『アトムの童』オダギリジョーの多面的な人物造形 クリエイティブが勝つというメッセージ
アイデアとワクワクに突き動かされる那由他。冷静そうに見えて義理を重んじる“情”の人·隼人。辣腕の陰で技術へのリスペクトを抱く興津。三者三様のゲームに対する向き合い方は当初から一貫している。那由他と隼人が仲たがいと和解を繰り返し、敵だった興津と組む動きだけ取ると、その時々の状況でくっついては離れているだけのようにも見えるが、興津を含む全員が自身の理想をまっすぐに追求した結果がこれまでの各話だった。アトムロイドばりにキャラ造形をしっかり行った上で、物語上で縦横無尽に動かしているのが本作である。
コントローラーを握った那由他と興津の会話は、「契約なんて立場によって見方が変わる」「(興津が嫌われているのは)人を大事にしなかったから」など味わい深いセリフがいくつもあった。一歩間違えれば那由他が興津になっていたかもしれず、容易に反転する善悪の構図から、本質的にフラットで誰もが可能性を秘めているのがゲームの世界という考えも浮かんでくる。
興津の思いを感じた那由他は海(岸井ゆきの)や繁雄(風間杜夫)に頭を下げ、ゲーム開発への協力を依頼。断りに行ったはずの繁雄がアトムロイドを前にして持ち前のおもちゃ愛が爆発して、結果的に大いに協力してしまう描写は、ものづくりに携わる人なら頷けるものだったのではないか。「リアルを追求しすぎて夢をなくしている」という指摘は、過度に批判を恐れて冒険しない昨今の風潮に警鐘を鳴らしているように響く。根底にあるのはものづくりを中心に置く考えで、立場の違いを超えてクリエイティブが勝つというメッセージを発しているのが『アトムの童』である。
■放送情報
日曜劇場『アトムの童』
TBS系にて、毎週日曜21:00~21:54放送
出演:山﨑賢人、松下洸平、岸井ゆきの、岡部大(ハナコ)、馬場徹、栁俊太郎、六角慎司、玄理、飯沼愛、戸田菜穂、皆川猿時、塚地武雅(ドランクドラゴン)、でんでん、風間杜夫、オダギリジョー
ナレーション:神田伯山
脚本:神森万里江
演出:岡本伸吾、山室大輔、大内舞子、多胡由章
プロデュース:中井芳彦、益田千愛
音楽:大間々昂
製作著作:TBS
©︎TBS
公式サイト:https://www.tbs.co.jp/atomnoko_tbs/