山﨑賢人、飛躍の鍵はブレない主演力 “実写化王子”からかつてない進化

 『今際の国のアリス』(Netflix)待望のシーズン2がいよいよ12月22日から配信開始される。山﨑賢人、土屋太鳳のW主演によるシーズン1では、命がけの「げぇむ」に挑む極限のサバイバルが熱狂を巻き起こし、世界70カ国以上でトップ10にランクインするヒット作となった。また、現在放送中の『アトムの童』(TBS系)では、伝説のゲームクリエイター安積那由他を演じており、仲間とともに巨大インターネット企業に立ち向かう姿が支持を集めている。

『アトムの童』©︎TBS

 山﨑に対する印象は人それぞれだ。一般的に映画『キングダム』の信がよく知られているが、女性ファンには恋愛映画に登場する理想の相手役として、また、アニメ・漫画好きには『ジョジョの奇妙な冒険 ダイヤモンドは砕けない 第一章』や『斉木楠雄のΨ難』を筆頭に、不可能と言われた作品を映像化する“実写化王子”として記憶されることも多い。そのどれも間違いではなく、様々な顔を持つ山﨑の俳優としてのポテンシャルを示すものだが、近年の山﨑賢人はかつてない大きな変化のさなかにあり、役者として変貌を遂げている。

 山﨑の俳優デビューは2010年。オダギリジョー主演『熱海の捜査官』(テレビ朝日系)が最初だった。スクリーンで主演を重ねた山﨑の名を一躍有名にしたのは、2015年前期の連続テレビ小説『まれ』(NHK総合)で、土屋演じる主人公・希のパートナーとなる紺谷圭太を演じた。さらに同年の『デスノート』(日本テレビ系)で主人公・夜神月(窪田正孝)のライバルで世界一の探偵「L」として鮮烈な印象を残した。その後、映画『ヒロイン失格』、『orange-オレンジ-』、『オオカミ少女と黒王子』、『四月は君の嘘』、『一週間フレンズ。』で、桐谷美玲、二階堂ふみ、広瀬すず、川口春奈ら若手トップ女優と共演を重ねる中で、人気俳優としての地位を確立した。

 このままイケメン路線を進むことは十分可能だったと思われるが、山﨑はそうしなかった。人気絶頂のさなか、山﨑はより意欲的な役柄を演じ始める。『トドメの接吻』(日本テレビ系)の旺太郎はナンバーワンホストながら、過去にとらわれて愛を信じることができない屈折した性格で、『グッド・ドクター』(フジテレビ系)の新堂湊は自閉症スペクトラムとサヴァン症候群の小児科医で、純粋さゆえに周囲と衝突してしまうキャラクターだった。生きづらさを抱える人間の内面を山﨑は繊細なタッチで描き、その姿は映画『羊と鋼の森』でも確認できる。原作ファンの人気が根強い『ジョジョの奇妙な冒険』や福田雄一監督作の『斉木楠雄のΨ難』、『ヲタクに恋は難しい』ではクセの強い主人公キャラに挑戦。あえて高いハードルを設け、それを超えることで実力派俳優への階段を一歩ずつ登っていく様子は爽快ですらあった。

 山﨑のイケメン俳優からの変身は、視点の転換をともなっている。それまでの山﨑は憧れの対象としてもっぱら「見られる」側だったが、より主体的に物語を動かし、時に与えられた運命に抗う人物像に移行しているのは興味深い。その一つの到達点が『キングダム』の信である。戦災孤児だった信はともに育った漂(吉沢亮)の思いを胸に、秦王の嬴政(吉沢亮)とともに中華統一を目指して戦う。『キングダム』の魅力は成が抱く天下統一の意志と、信が持つ並外れた熱量のコンビネーションに負うところが大きい。天下の大将軍になると宣言する信は、これまでの山﨑のイメージを大きく打ち破るものだった。

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