堤真一とクリス・ヘムズワースに共通点? 『ファーストペンギン!』で果たす重要な役割

 現在放送中のドラマ『ファーストペンギン!』(日本テレビ系)は、主演を務める奈緒のころころと変わる表情や、ひたすら前に突き進む強い意志を表現する演技が光る作品だ。そんな奈緒をさらに引き立たせ、演技で支えているのが、片岡洋を演じる堤真一である。

 本作は、奈緒演じる岩崎和佳をはじめ、多くの女性キャラクターが個性的な存在感を持って登場する。序盤からストーリーを大きく動かしたり、現状を打開しようと奔走するのも女性キャラクターであり、強固な男社会である漁師という職の対比としても重要な役割を担う。昨今はフェミニズムやシスターフッドをストーリーにうまく入れ込む作品も日本で多く制作されるようになり、本作もそれらと同じ意味合いで女性たちの活躍や連帯が、寂れた港町を舞台に分かりやすく描かれているのだ。こうした物語の中でメインとなる男性キャラクターが主人公と恋愛関係に発展せずどのような立ち回りをし、誰がどう演じるのかは作品の良し悪しを決める重要な要素となる。

 近年、女性が主演を務める作品で男性キャラクターを演じるのは、知名度が高く、かつ実力のある俳優であることが多い。アメリカ俳優を例に出すと、映画『マイティ・ソー』(2011年)をはじめとしたマーベル・シネマティック・ユニバース作品でソーを演じるクリス・ヘムズワースが印象的だ。

 彼は『マイティ・ソー』で世界から一気に注目を集めたあと、リブート版の映画『ゴーストバスターズ』(2016年)や『メン・イン・ブラック:インターナショナル』(2019年)などに出演。両作共に女性俳優が主演を務める作品だ。特に『ゴーストバスターズ』でヘムズワースが演じたのは“イケメンで屈強な肉体を持つおバカ”であり、物語になんら影響を及ぼさない立ち回りのキャラクターだ。性的なアイコンとして存在し、観客に少しの笑いを提供するキャラを敢えて制作側が男性に演じさせることで、それまでそうしたポジションに置かれ続けていた女性キャラクターへの違和感を表現している。ヘムズワース自身もこうした立ち回りをあえて取らせる男性キャラクターの重要性を理解した上で演じており、アドリブ満載のユーモア溢れる演技で同作のヒットに貢献した。

 日本の作品では、2022年7月期に放送されていた火曜ドラマ『ユニコーンに乗って』(TBS系)で西島秀俊が演じた小鳥智志が記憶に新しい。小鳥も女性主人公を下から支える立ち回りをしており、ストーリー展開に貢献しつつ、全面に出過ぎない秀逸なバランス感覚で成り立つキャラクターだった。

 今作ではこのポジションを、堤演じる片岡が担っている。片岡は地方の寂れた町で漁師として生活するキャラクターであり、当初は船団の社長で男社会の一員として登場する。自ら岩崎に事業改革や社長就任を頼むものの、「女性だから」「(漁師という)世間を知らないから」とも受け取れる理由で和佳を信用し切れない素振りも見せていた。しかしストーリーが進むにつれ、それまでの常識や強固な縦社会に疑問を抱き、少しずつ物の見方や受け止め方を変えて行く。頼り甲斐があるのかないのか曖昧で、自分の立ち位置を模索しているような片岡を堤が演じることにより、その繊細な心の機微がうまく表現されている。だからこそ、和佳というしっかりと自分を持ったキャラクターが、より存在感を放つのだ。

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