『魔法にかけられて2』が描く“おとぎ話”の問題点 15年前の前作からの変化とは?

 現代のニューヨークにディズニープリンセスがやってきて大騒動が巻き起こる実写映画『魔法にかけられて』(2007年)は、そのユニークな試みが大きな反響を呼んだコメディ作品だ。これまでのディズニープリンセス作品のイメージを、ディズニー自身がパロディ化し、現代の社会とのギャップを批評的な見方で作品に反映させながら、笑いに転化するのである。その一方で、笑うだけではなく、ファンタジーや夢見ることの素晴らしさをも表現しているのも特徴だ。

 そんな『魔法にかけられて』の続編映画『魔法にかけられて2』が、なんと公開から15年の時を経て、ディズニープラスより配信された。『トレインスポッティング』(1996年)の続編『T2 トレインスポッティング』(2017年)が、前作公開よりおよそ20年ぶりに公開され、時の流れを否が応でも感じざるを得なかったのと同様、『魔法にかけられて』のファンもまた、いろいろな感情を揺さぶられることは間違いない。

 当時30代前半でプリンセスを演じたエイミー・アダムスは、いまやアラフィフの域。相手役のパトリック・デンプシーも50半ばとなっている。本作『魔法にかけられて2』で、再び出演するキャストたちが年を重ねるのを観て、時の流れを意識することで、われわれ観客も同じだけ年をとったことを実感するだろう。

 よくあるおとぎ話と同様、「そしていつまでも、幸せに暮らしましたとさ……」(Ever After...)という展開で結ばれた前作から、ストーリーも15年進んだ。家族となったジゼル(エイミー・アダムス)とロバート(パトリック・デンプシー)、そして新たにガブリエラ・バルダッチノが演じる娘モーガンと、初登場キャラクターである赤ちゃんのソフィアは、大都会ニューヨークの暮らしを終え、郊外へと移り住むことになる。

 だが、郊外モンローヴィルでの新生活は、家族にとって幸せな日々とはならなかったようだ。ロバートは勤務先までの長距離通勤に疲れきり、多感なティーネイジャーとなったモーガンは学校に馴染めず、ソフィアは泣き喚いてばかり。ジゼルもまた、モンローヴィルの“女王”と呼ばれる有力者マルヴィナ・モンロー(マーヤ・ルドルフ)の振る舞いに翻弄されていた。失望したジゼルは、故郷アンダレーシアに伝わる魔法の杖の力を借りて、現実をおとぎの国に変えてしまうのだった。

 それによってモンローヴィルは、アンダレーシアのようなファンタジックな世界となり、住人たちは全ておとぎ話における典型的な役柄に変えられる。ここから、さまざまなディズニー・アニメーションのパロディが散りばめられるので、ディズニーファンはとくに楽しめるだろう。ロバートは勇敢な英雄を目指す男となり、モーガンはシンデレラのようなキャラクターに変わる。なかでも衝撃的なのは、プリンセスであったはずのジゼルが“悪い継母(ままはは)”タイプのヴィランへと人格が変化させられそうになるという展開だ。

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