今が“旬”! マ・ドンソク、ファン・ジョンミンら、年齢を重ね魅力を増す韓国の名優たち

ユ・ヘジン

『コンフィデンシャル 共助』メイキング映像

 「ユ・ヘジンは最高だ」とまず宣言させてもらう。もしあなたがなんとなく韓国映画を観て、そこにやたら顔の濃い人がいたら間違いなくユ・ヘジンだ。映画を観ていると、たまに「国やジャンルを代表している」と思わせる俳優がいる。それは世界的知名度や人気、顔つきの良さで決まらない。映画を観た時、その人がいるだけで国の風土やジャンル映画の空気などを感じさせて、安心感を覚える俳優がそうだ。香港映画で言えばサイモン・ヤム。それからタイを舞台にした映画におけるヴィタヤ・パンスリンガムなどがそうだろう。また、低予算格闘映画におけるブラヒム・チャブもこの枠に加えたい。ユ・ヘジンはまさにそんな俳優だ。

 ユ・ヘジンがいるだけで、「ああ、自分は韓国映画を観ているのだ」と安心感を覚える。そんなユ・ヘジンのおすすめ作品は、『コンフィデンシャル/共助』(2017年)。これはバディ映画の王道を行くような作品で、「韓国の娯楽映画を観たい」と思った時、これ以上の作品はないだろう。ユ・ヘジンは韓国のズッコケ刑事を演じており、北のエリート刑事を演じるヒョンビンとの激熱バディを組む。

キム・ウォンジン

映画「サスペクト 哀しき容疑者」予告篇

 このリストを作製するにあたってまず紹介すると決めたのがマ・ドンソクで、その次がキム・ウォンジンだ。なぜなら我々はもっとキム・ウォンジンを知る必要があるからだ。キム・ウォンジンは90~0年代の香港映画で活躍した格闘俳優である。彼の特徴はなんといっても超絶身体能力から繰り出される蹴り技だ。異様なキレの良さと羽根のような軽やかさで凄まじい蹴りを放つ。格闘映画には様々な蹴り技使いがいるが、彼の右に出るものはそうそういない。しかし、キム・ウォンジンはカサノバ・ウォン(香港映画で活躍した韓国の俳優)ほどブレイクしなかった。なぜなら顔がものすごく地味だから。どれくらい地味かというと、シソンヌのじろうから存在感を奪った感じと言えばわかりやすい。キム・ウォンジンがブレイクしなかったのは、映画史における悲劇のひとつといっても過言ではない。

 とはいえ、ブレイクこそしなかったもののアクション映画における彼の影響は非常に大きい。そのひとつがキム・ウォンジンの名前を冠した蹴り技「ウォンジン・キック(Won Jin Kick)」だ。アクロバティックで難易度の高い蹴り技なのだが、なんと『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』(2016年)でブラックパンサーがウォンジン・キックを放つのを見ることができる。キム・ウォンジンの名は売れなかったが、キム・ウォンジンの名を冠した蹴りは世界へと波及したのだ。

 そんなキム・ウォンジンのおすすめ作品は、視聴難易度の観点からいっても『サスペクト 哀しき容疑者』(2013年)がベストだろう。己の地味な容姿を活かして、タクシー運転手に扮した殺し屋を演じている。もし地味な背格好で異常にキレのいい動きをしている男がいたら、それがキム・ウォンジンだ。それから岡村隆史にガイバーキックを食らわせる『無問題2』(2001年)もおすすめ。

クォン・サンウ

『鬼手』©2019 CJ ENM CORPORATION, MAYS ENTERTAINMENT ALL RIGHTS RESERVED

 年を重ねるとどうしても若い頃と同じようには動けない。そんな中、恋愛ドラマで活躍しながら40代を越えアクション映画でも頭角を表したのがクォン・サンウだ。元々『火山高』(2001年)で映画デビューしたクォン・サンウだが、近年は特にアクション映画での活躍が目覚ましい。『鬼手』(2020年)では家族を殺された男が拳と囲碁で復讐する映画であり、囲碁で戦った次の瞬間、拳で殴り合ったりする。『ヒットマン エージェント:ジュン』(2020年)では元スパイの漫画家を演じており、コメディ演技とアクションの両刀を振るっている。どちらの作品も大変面白いのだが、この場ではひとまず『鬼手』を紹介したい。

 「極悪プロ棋士に復讐するために棋力と拳を鍛える」というプロットにまず狂気を感じるが、本編はさらにブッ飛んでいる。霊能力を駆使して囲碁を打つ「長城の占い師(ウォン・ヒョンジュン)」や、負けると硫酸が飛び出るデス碁盤でデス囲碁を仕掛ける「ウェトリ(ウ・ドファン)」など、おかしな設定のキャラクターが次々クォン・サンウに襲いかかる。対するクォン・サンウも復讐するために棋力と拳を鍛えているのだから相当おかしい。そんなクォン・サンウの腹筋は、まるで碁盤のように美しい。これは個人的意見だが、クォン・サンウはアクションが上手い。流石にキム・ウォンジンのようなアクロバットはないが、細やかな動きでアクションにおける「説得力」を演出している。アクション俳優として頭角を表したクォン・サンウの次の一手に注目だ。

 こうしてリストを作成して思ったのは、いまだ最前線で活躍している俳優が多いことだ。年を重ねた俳優が「まだまだやってやろう」と挑戦する背中を見るから、次の世代もがんばれる。年を重ねた俳優はただ魅力的なだけではない。きっと勇気を与えてくれる存在なのだ。

■公開情報
『犯罪都市 THE ROUNDUP』
TOHOシネマズ 日比谷ほか全国公開中
監督:イ・サンヨン
出演:マ・ドンソク、ソン・ソック、チェ・グィファ、パク・チファンほか
配給:HIAN
©ABO Entertainment Co.,Ltd. & BIGPUNCH PICTURES & HONG FILM & B.A.ENTERTAINMENT CORPORATION
公式サイト:hanzaitoshi.jp
公式Twitter:@hanzaitoshi

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